国立小学校は学費がかからないと聞いて、気になっています。
でも、私立や公立とは何がちがうのか、入試のしくみもよく分からなくて……。
【国立小学校とは】国立大学の附属学校としての役割
国立小学校とは、国立大学法人が設けている小学校のことで、「○○大学附属小学校」などの名前がついています。学校教育法では、国(国立大学法人をふくむ)が設ける学校を「国立学校」と定めています。
国立小学校が私立・公立とちがうのは、大学とつながった「研究の場」でもある点です。文部科学省の報告(2001年)では、附属学校の基本的なあり方として「大学学部の研究への協力」と「教育実習の実施」が挙げられています。また、2017年の文部科学省の有識者会議の報告書では、公立・私立とはちがう附属学校としての役割をはっきりさせること、入学者の選び方と教育・研究、その成果を社会に返すことのつながりをはっきりさせることが求められています。
学校の公式の説明にも、この役割があらわれています。
- 筑波大学附属小学校は、令和9年度の募集の公示で、初等教育の実験・実証的な研究を使命とし、中学受験のための準備は行わない方針を示しています。
- 同校の公式サイトでは、国内外から年間1万人以上の教育関係者が訪れる、初等教育の理論と実践を研究する学校として紹介されています。
つまり国立小学校は「受験に強い学校」というより、新しい授業のあり方を試し、その成果を全国の学校に広げる役割をもつ学校です。研究授業や公開研究会、教育実習の受け入れなど、ほかの学校にはない行事があることも知っておくと、入学後のイメージがつかみやすくなります。
【国立小学校】私立・公立とのちがい(学費・通学区域・入学の決まり方)
まず、3つの学校のちがいを表で整理します。
| 国立小学校 | 私立小学校 | 公立小学校 | |
|---|---|---|---|
| 設けている所 | 国立大学法人 | 学校法人 | 市区町村など |
| 授業料 | 徴収できない(法律) | 学校ごとに定める | 徴収できない(法律) |
| 入学の決まり方 | 学校ごとの選考(抽選・検査など) | 学校ごとの考査 | 教育委員会が通う学校を指定 |
| 住む場所の条件 | 通学区域を決めている学校がある | 学校ごとに違う | 住所で通う学校が決まる |
学費:学校教育法第6条では、学校は授業料を集めることができる一方で、国立・公立の小学校などの義務教育では授業料を集めることができないと定めています。国立小学校の授業料がかからないのは、この決まりによるものです。ただし、授業料以外の費用(学用品など)があるか、いくらかかるかは、説明会や学校からの案内で確かめてください。
入学の決まり方:公立小学校は、学校教育法施行令第5条により、市区町村の教育委員会が入学する学校を指定します。国立や私立の小学校に入学するときは、同施行令第9条により、学校の就学承諾を証明する書類をそえて、住んでいる市区町村の教育委員会に届け出るしくみです。手続きの時期や書類は、学校と市区町村の案内に従いましょう。
通学区域:今回確かめた国立小学校3校は、いずれも決められた区域に住んでいることを出願や在学の条件にしています。お茶の水女子大学附属小学校のように、区域内に住むことが入学後の在学の条件にもなる学校があるのは、公立とも私立ともちがう国立小学校の大きな特徴です。
【国立小学校】通学区域・抽選・検査のしくみ(2027年度入試の例)
国立小学校の入試では、「抽選」と「検査(調査)」を組み合わせる学校があります。何回抽選があるか、どの順番かは学校ごとに違います。ここでは、公式の資料で確かめた2027年度(令和9年度)入試の例を3校紹介します。最新は各校の募集要項でご確認ください。
筑波大学附属小学校(令和9年度入学児童募集の公示より)
- 募集人員:第1学年 約128名(男女ほぼ同数)
- 出願資格:令和2年4月2日〜令和3年4月1日生まれで、出願日の時点で東京都23区・西東京市・埼玉県和光市に保護者と住んでいること。受験のための一時的な住所変更は認められません
- 流れ:第一次選考(抽選・11月7日)→第二次選考(検査・12月13日〜15日)→第三次選考(抽選・12月17日)→入学候補者発表(12月18日)
東京学芸大学附属大泉小学校(令和9年度新1年生入学調査のお知らせより)
- 通学区域:練馬区・豊島区・板橋区・文京区・新宿区・中野区・杉並区・北区・西東京市・東久留米市・清瀬市・武蔵野市・東村山市・三鷹市・小平市・和光市・新座市・朝霞市・所沢市
- 流れ:第1次選考(抽選・10月9日)→第2次選考(総合調査・11月25日と26日の両日)→発表(11月28日)
- 区域の中でも、通学時間や乗り換えの負担、安全面を考えるよう呼びかけています
お茶の水女子大学附属小学校
- 2027年度入学の出願資格:2020年4月2日〜2021年4月1日生まれで、保護者と同居し、東京都23区内に住んでいること(入学後の在学の条件にもなります)
- 2026年度入学の説明会Q&Aでは、第一次検定は抽選、第二次検定は学校による検定、第三次検定は抽選と説明されています
このように、最初に抽選で人数をしぼる学校、検査のあとに抽選をする学校など、形はさまざまです。抽選のくわしいしくみは国立小学校の抽選についての記事で、筑波と大泉のちがいは筑波大学附属小学校と東京学芸大学附属大泉小学校の比較記事でまとめています。
【国立小学校】附属中学校への内部進学の考え方
「附属小学校に入れば、附属中学校まで進める」と考えるご家庭もありますが、しくみは学校ごとに違います。公式の説明で確かめられた例は、次のとおりです。
- 筑波大学附属小学校:学校紹介のページで、附属中学校への進学は、附属中学校の入学試験を受けて合格した人に限られると説明しています。
- お茶の水女子大学附属小学校:2026年度入学の説明会Q&Aで、附属中学校へは「連絡進学」というしくみで、一般の受験者と同じ入学検定を受け、小学校での生活の様子もふまえて中学校が判断すると説明しています。進学者は結果として5〜6割程度で、年度によって変わること、内部進学を希望する場合はほかの学校との併願ができないことも示されています。
国立小学校は、6年間の学びを大切にする学校です。附属中学校へ進めるかどうかは入学の時点では決まっていない、と考えておくと安心です。説明会では「附属中学校への進学のしくみ」「ほかの中学を受験する場合の扱い」を確かめておきましょう。
【国立小学校】向いているご家庭の考え方
国立小学校が「合う・合わない」は、ご家庭の考え方によって変わります。次のような点を、ご家族で話し合ってみてください。
- 研究校であることを前向きにとらえられるか:研究授業や教育実習の時期があり、新しい授業の形を試すこともあります。
- 通学区域に住み続けられるか:区域内に住むことが在学の条件になっている学校では、転勤や引っ越しの予定も考えておく必要があります。
- 保護者の協力の時間をとれるか:お茶の水女子大学附属小学校のQ&Aでは、入学当初の登下校の付き添いや、1・2年生のときに多いときで月2〜3回ほど来校する機会があると説明されています。
- 中学からの進路をどう考えるか:筑波大学附属小学校のように、中学受験のための準備は行わないと示している学校もあります。
また、抽選がある以上、どれだけ準備をしても結果が運に左右される面があります。国立小学校だけを受けるのか、私立と組み合わせるのかも、早めに決めておくと準備の進め方がはっきりします。国立だけを受ける場合の考え方は国立小学校の専願受験についての記事もあわせてご覧ください。
【国立小学校】よくある質問
Q. 国立小学校は本当に授業料がかからないのですか?
A. 学校教育法第6条で、国立の小学校の義務教育では授業料を集めることができないと定められています。授業料以外にかかる費用は学校ごとに違うので、説明会などで確かめてください。
Q. 通学区域の外に住んでいても受けられますか?
A. 区域内に住んでいることを条件にしている学校では、受けられません。筑波大学附属小学校は出願日の時点で区域内に保護者と住んでいることを条件にし、受験のための一時的な住所変更も認めていません。区域や「いつの時点で住んでいる必要があるか」は学校ごとに違うので、その年度の募集要項で確かめてください。
Q. 抽選だけで決まるのですか?
A. 今回確かめた学校は、いずれも抽選と検査(検定・調査)を組み合わせています。2027年度入試では、筑波大学附属小学校は「抽選→検査→抽選」、東京学芸大学附属大泉小学校は「抽選→総合調査」という流れが示されています。
Q. 合格したら、住んでいる市区町村には何か手続きが必要ですか?
A. 国立や私立の小学校に入学するときは、学校の就学承諾の書類をそえて、住所地の教育委員会に届け出るしくみがあります(学校教育法施行令第9条)。案内が届いたら、時期をのがさないようにしましょう。
Q. 塾や模試は必要ですか?
A. ご家庭の状況によります。考え方は国立小学校の受験に塾は必要かの記事と国立小学校の受験に模試は必要かの記事で紹介しています。家庭学習の進め方に迷うときは、家庭学習サポートでご相談いただくこともできます。
Q. 学校ごとのくわしい情報はどこで読めますか?
A. お茶の水女子大学附属小学校のまとめ記事、東京・神奈川の国立小学校をまとめた記事のほか、地方の学校は広島大学附属小学校、神戸大学の附属小学校、熊本大学の附属小学校の記事もご覧ください。
▶ 国立小学校の特殊性と対策の進め方をまとめた『国立小学校 専願受験専用マニュアル』(PDF)は、筆者のオンラインショップで販売しています。
地方の国立小学校の受験情報まとめ
▶ 北海道・東北:弘前大学教育学部附属小学校/岩手大学教育学部附属小学校/宮城教育大学附属小学校/秋田大学教育文化学部附属小学校/山形大学附属小学校
▶ 関東:茨城大学教育学部附属小学校
▶ 中部:新潟大学附属新潟小学校/新潟大学附属長岡小学校/上越教育大学附属小学校/富山大学教育学部附属小学校/金沢大学附属小学校/福井大学教育学部附属義務教育学校/山梨大学教育学部附属小学校/信州大学教育学部附属長野小学校/信州大学教育学部附属松本小学校/岐阜大学教育学部附属小中学校
▶ 近畿:三重大学教育学部附属小学校/兵庫教育大学附属小学校
▶ 中国・四国:鳥取大学附属小学校/島根大学教育学部附属義務教育学校/岡山大学附属小学校/広島大学附属東雲小学校/広島大学附属三原小学校/山口大学教育学部附属山口小学校/山口大学教育学部附属光義務教育学校/鳴門教育大学附属小学校/香川大学教育学部附属高松小学校/香川大学教育学部附属坂出小学校/愛媛大学教育学部附属小学校/高知大学教育学部附属小学校
▶ 九州・沖縄:福岡教育大学附属小倉小学校/福岡教育大学附属久留米小学校/佐賀大学教育学部附属小学校/長崎大学教育学部附属小学校/大分大学教育学部附属小学校/宮崎大学教育学部附属小学校/鹿児島大学教育学部附属小学校/琉球大学教育学部附属小学校
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