入室の基本の流れ
まずは全体の流れをつかみましょう。①ドアを2〜3回ノックする。②中から「どうぞ」と返事があってから、静かにドアを開ける。③「失礼します」と一言添えて軽く会釈し、入室する。④ドアは後ろ手にならないよう、体を向けて静かに閉める。⑤指定の椅子の横まで進み、「よろしくお願いいたします」と一礼する。⑥「お座りください」と促されてから着席する。この一連を家族で何度か通しで練習しておくと、当日も流れに迷わず、落ち着いて臨めます。順番を頭で覚えるより、体で覚えるイメージです。
お辞儀と挨拶の作法
挨拶で意識したいのは「語先後礼(ごせんごれい)」です。言葉を言いながら同時に頭を下げるのではなく、「よろしくお願いいたします」と言い終えてからお辞儀をすると、ぐっと丁寧で落ち着いた印象になります。お辞儀の角度は深すぎず、上体を15〜30度ほど傾けてゆっくり戻すと自然です。お子さんには「お顔を見て、はっきりした声でご挨拶しようね」と伝えておきましょう。大きすぎる声よりも、相手にきちんと届く明るい声が好まれます。
着席中の姿勢
座っている間の姿勢も、実はよく見られています。背筋を伸ばし、手は膝の上に軽く重ねるか、男の子は軽く握って膝に置きます。足はそろえて床につけ、ぶらぶらさせないように。視線は話している人のほうへ自然に向けます。これは保護者も同じで、足を組む・背もたれに深くもたれる・腕を組むといった姿勢は避けましょう。親の落ち着いた佇まいが、家庭全体の印象を静かに底上げします。長時間きれいに座るのは子どもには難しいので、ここも練習が効きます。
子どもとの事前練習のコツ
本番でいきなりできることではないので、家庭での練習がものを言います。実際にドアを使って「ノック→入る→ご挨拶→座る」を繰り返し、名前・年齢・好きなものを聞かれる練習も合わせて行いましょう。慣れてきたら、おじいちゃんやぬいぐるみを面接官役にして、いつもと違う相手でも落ち着けるようにすると効果的です。大切なのは、固まってしまったときの対応です。お子さんが答えに詰まったら、親は答えそのものを言うのではなく「ゆっくりでいいよ」と小さく促す程度に。沈黙を怖がらず、待ってあげる姿勢が信頼につながります。
緊張している子どもへの声かけ
当日、控室や入室直前の声かけも大切です。「失敗しないようにね」と緊張をあおる言葉より、「いつもどおりでいいよ」「終わったら好きな話をしようね」と安心できる言葉をかけてあげましょう。親がそわそわしていると子どもにも伝わるので、まずは保護者自身が落ち着くこと。深呼吸を一緒にする、手を握るなど、いつものスキンシップが何よりの安定剤になります。
退室の作法
面接が終わったら、「ありがとうございました」とお礼を述べて一礼します。立ち上がって椅子の横で再度会釈し、ドアの前まで進んだら、もう一度振り返って軽く会釈してから静かに退室します。最後まで丁寧に——退室の所作まで気を抜かないことが、好印象を保つ秘訣です。終わった安心感で表情や姿勢が一気に緩みがちなので、「部屋を出るまでが面接」と親子で確認しておきましょう。
やりがちなNG
避けたいのは、ノックをせずに入る/ドアを大きな音で閉める/親が子どもの代わりに何でも答えてしまう/きょろきょろと落ち着きなく見回す/途中で姿勢が崩れる、といった点です。どれも「練習不足」と「親の先回り」が原因で起きがちです。逆に言えば、事前に流れを体に入れ、子どもに任せる勇気を持てば、ほとんど防げます。
所作より大切なのは「面接の中身」
入退室の作法は基本を押さえれば十分で、所作の完璧さで合否が決まるわけではありません。本当に差がつくのは、面接で何を話すか、そして面接での食いつきを左右する願書の中身です。ペーパーや対策と同じくらい、ここにも力を入れてほしいと思います。
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当日の朝から面接室に入るまでの流れ
入退室の作法だけを練習しても、当日はうまくいきません。見られているのは、校門をくぐった瞬間から退出するまでのすべてです。時間の流れにそって、確認しておきましょう。
校門から受付まで
到着は、指定時刻の15分前を目安にしてください。早すぎると外で待つことになり、お子さまが冷えたり飽きたりします。校門をくぐったら、あいさつをします。すれ違う方が誰であっても、こちらから会釈をしてください。校内では、携帯電話の電源を切ります。マナーモードではなく、電源を切ってください。
控え室での過ごし方
控え室は、待つ場所であって、練習する場所ではありません。直前に問答を確認したり、お子さまに言い聞かせたりするのは避けてください。まわりのご家庭にも聞こえますし、何よりお子さまの表情が固くなります。持っていくとよいのは、静かに読める薄い絵本を1冊と、上着だけです。飲み物やお菓子は、案内がある場合を除いて出さないほうが無難です。
呼ばれてから、扉の前まで
名前を呼ばれたら、返事はお子さまにさせてください。ここで保護者が代わりに答えてしまうと、その後もお子さまが黙る流れができます。移動中は手をつないで構いませんが、扉の前では離します。荷物は、指示がなければ手に持ったまま入室し、着席してから足元に置きます。椅子の背もたれに荷物をかけるのは避けてください。
ご家庭でできる、1週間の練習メニュー
作法の練習は、長くやるほど身につくものではありません。1日5分を1週間続けるだけで十分です。日ごとに練習することを1つに絞ってください。
- 1日目……ノックと入室だけ。扉を3回たたき、「どうぞ」を待ってから開けます。開けたら閉めるところまでを3回
- 2日目……あいさつとお辞儀。「よろしくお願いいたします」と言い終えてから、頭を下げます。同時にしないのが要点です
- 3日目……着席。すすめられてから座り、背もたれに寄りかからない。手はひざの上
- 4日目……名前と年齢を答える。目を見て、最後まで声を落とさずに言えるかを見ます
- 5日目……質問を1つだけ受けて答える。答えの内容は問いません。姿勢が崩れないかだけを見ます
- 6日目……退室まで通しで1回。途中で止めず、最後までやりきります
- 7日目……ふだんの服装ではなく、当日着る服で通しを1回。靴も履いてください
7日目を飛ばさないでください。当日の服は、ふだんより動きにくく、お子さまは思うようにふるまえません。一度着て練習しておくだけで、当日の落ち着きがまったく違います。服装そのものについては面接の服装にまとめています。
入退室マナーについてよくある質問
Q 子どもが入室でつまずいたら、どうすればよいですか
手を出さないでください。ノックを忘れても、あいさつが小さくても、そのまま進めさせます。保護者が直した瞬間に、お子さまは「失敗した」と受け取り、そのあとの受け答えが崩れます。もし先生から促されたら、笑顔でうなずくだけにしてください。作法の失敗そのもので不合格になることは、まずありません。
Q 途中で子どもが泣き出したら
まず、あわてないでください。保護者が焦ると、お子さまはさらに不安になります。背中に手を当てて、「大丈夫だよ」と一言だけかけます。長く声をかけ続けないことが大切です。落ち着くまで先生が待ってくださることも多く、その間の保護者のふるまいのほうがよく見られています。
Q 夫婦のどちらが先に入室すべきですか
決まりはありません。案内された順で構いません。よくあるのは、父・子・母の順に並ぶ形ですが、家庭ごとに事情があります。お子さまが不安になりやすい場合は、お子さまを真ん中にしてください。父親が出席できない場合の伝え方は面接に父親が来られないときの伝え方をご覧ください。
Q 控え室で、他のご家庭に話しかけられました
短く応じて構いません。無視をするほうが、かえって目立ちます。ただし、志望校の話や、お子さまの出来具合の話には入らないでください。「そうなんですね」で受けて、それ以上広げないのがいちばんです。面接で避けたい話題は面接のタブー10選にまとめています。
まとめ
入退室のマナーは、特別に難しいことではありません。基本の流れを親子で練習し、当日は「いつもどおり」を心がければ十分です。所作の完璧さより、落ち着いた自然な振る舞いと、子どもを信じて見守る親の姿勢が、いちばん良い印象を残します。練習の時間を、ぜひ親子の楽しいやり取りの時間にしてください。
Q. ノックは何回が正解ですか?
A. 一般的には2〜3回が自然です。回数そのものより、落ち着いたリズムでノックし、返事を待ってから入ることが大切です。
Q. 子どもが質問に答えられず黙ってしまったら?
A. 親がすぐに代わりに答えるのは避けましょう。「ゆっくりでいいよ」と一言添えて待つ姿勢のほうが好印象です。沈黙を過度に恐れなくて大丈夫です。
Q. 親はどこまで手助けしてよいですか?
A. 促す程度にとどめ、答えそのものは言わないのが基本です。子どもの自立を見たい場面なので、見守る姿勢を大切にしてください。
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