受験の絵画で見られていること
まず大前提を共有しましょう。考査で見られているのは、絵の巧拙ではなく、①指示をきちんと理解できるか、②楽しんで意欲的に取り組めるか、③自分なりの発想があるか、④時間内に最後まで仕上げられるかです。つまり、画家のような絵が描けなくても全く問題ありません。むしろ、のびのびと自分らしく描ける子が高く評価されます。
「上手に描かせよう」としない
親がいちばんやりがちで、いちばん避けたいのが「もっと上手に」と口を出すことです。「そこは赤じゃないでしょ」「もっと大きく描きなさい」と言われると、子どもは描くことが嫌いになってしまいます。否定せず、自由に描かせること。子どもの絵には子どもなりの世界があります。まずはその世界を一緒に楽しんでください。
指示を聞く練習
受験の絵画は「好きな絵を描く」ではなく、「○○を描きましょう」という指示が出ることがほとんどです。だからこそ、題に沿って描く練習が大切。家庭でも「今日は楽しかったことを描いてみよう」「家族でお出かけした絵を描こう」とテーマを決めて描かせると、指示を聞いて題に沿う力が育ちます。聞き逃さず、最後まで指示を聞く習慣もここで身につきます。
道具に慣れる
クレヨン・色鉛筆・のり・はさみといった道具に慣れておくことも大切です。特に色をしっかり塗り込むこと(塗り残しや薄塗りを減らす)は、丁寧さの印象につながります。いろいろな道具を使った製作遊びを日常に取り入れ、手が自然に動くようにしておきましょう。道具の扱いに慣れていれば、本番でも落ち着いて取り組めます。
発想を広げる声かけ
豊かな絵は、豊かな体験から生まれます。公園、動物園、季節の行事——いろいろな経験をさせ、「どんなだった?」「何が楽しかった?」と問いかけることで、描く題材が心の中に増えていきます。描いている最中も「これは何をしているところ?」と否定せず興味を持って聞くと、子どもは自分の絵を言葉で説明する力も育ちます。
時間内に仕上げる
考査には時間制限があります。普段から「時計の長い針がここまでね」と時間の感覚を持たせ、決められた時間内に仕上げる練習をしておくと安心です。途中で力尽きて白いまま、を防ぐため、「まず全体を描いてから細かいところ」という進め方も教えてあげましょう。完成させる経験そのものが、自信になります。
やってはいけない関わり方
避けたいのは、親が代わりに描く・ダメ出しを繰り返す・見本どおりに描かせることです。これらは子どもの自由な発想と意欲を奪ってしまいます。受験の絵画で大切なのは個性と楽しむ姿勢。親の理想を押しつけず、子どもの表現を尊重してあげてください。
「お話の絵・絵のお尋ね」は面接にも効く
絵画の中でも「お話の絵」や「絵のお尋ね(描いた絵について質問されること)」は、毎日少しずつ取り組むことで確実に上達していきます。実際、個別家庭学習サポートのご家庭では、毎日どんなやり取りをしたかを記録として共有いただいていますが、「こう取り組めばいい」という形で続けるほど、お子さんがコツを学び、ぐんぐん上手になっていきます。
さらに大きいのが面接との相乗効果です。自分の描いた絵について自分の言葉で説明する練習は、お話しする力そのものを伸ばします。お話が上手になると、面接の受け答えも自然と上達していくのです。
こうしたご要望を受けて、私は「絵画のお尋ね」「お話の絵とお尋ね」の専用教材を作成しました。個別家庭学習サポートのご家庭には追加料金なしでご提供し、毎日の取り組みを記録・共有しながら一緒に伸ばしています。
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絵画の練習を、ご家庭でどう進めるか
一回十五分の進め方
絵画は、長い時間をかければ伸びるものではありません。一回十五分を、次の順番で区切って進めてください。
- はじめの一分……今日の課題を一度だけ読み上げます。二度は言いません
- 次の一分……「何を描くか」を口で言ってもらいます。ここで決まらないお子さまは、本番でも手が止まります
- 十分……描きます。途中で口を出さず、見ているだけにします
- 最後の三分……描いたものについて質問します。「これは誰?」「このあとどうなるの?」と、絵の中の話を聞きます
最後の三分を省かないでください。絵画の試験では、描いた絵について尋ねられることがあります。描くことと話すことは、ひと続きの練習だと考えてください。
年中から年長までの一年の流れ
一年をどう配分するかで、秋の仕上がりが変わります。目安は次のとおりです。
- 年中の一年間……自由に描く時間をたっぷりとります。課題を決めず、好きなものを好きなだけ描かせてください
- 年長の春……クレヨンやサインペンなど、道具の使い分けに慣れます。塗り残しをなくす練習もこの時期です
- 年長の夏……課題を与えて描く練習に移ります。時間はまだ計りません
- 年長の九月ごろ……時間を計り始めます。少し長めの時間から始め、少しずつ短くします
- 年長の十月以降……片づけまで含めて本番と同じ流れで通します。新しいことは足しません
直前になって新しい描き方を教えるのは逆効果です。秋からは、できることを確実にする時期だとお考えください。
絵画が苦手なお子さまへの、タイプ別の手立て
手が止まってしまうお子さま
何を描けばよいか決まらないうちは、鉛筆が動きません。この場合、描く技術ではなく、決める練習が必要です。課題を出したあと、「どこにいるところ?」「誰と一緒?」「何をしているところ?」の三つだけを口で答えてもらってから描き始めさせてください。三つ答えられれば、描くものは決まります。
まちがっても、お母様が「これを描いたら」と決めてしまわないことです。決めてもらう習慣がつくと、本番で必ず止まります。
時間内に終わらないお子さま
たいていは、描く順番が決まっていません。大きいものから描く、人を先に描く、色は最後にまとめて塗る、といった順番をご家庭で一つ決めておくと、それだけで速くなります。
そのうえで、残り時間を伝える練習をしてください。「あと五分」「あと二分」と声をかけ、途中でも手を止めて色を塗り始める、という切り替えを体で覚えさせます。真っ白な部分が残るより、最後まで仕上がっているほうが伝わります。
いつも同じものしか描かないお子さま
描けるものが少ないのではなく、体験の引き出しが少ないことがほとんどです。週末に出かけた先で見たものを、その日のうちに一枚描く習慣をつけてください。描くために出かけるのではなく、出かけたから描く、という順番です。
また、家族の話題の中で「昨日いちばん楽しかったこと」を毎日ひとつ言い合うだけでも、描く材料は増えていきます。
人を描くのを嫌がるお子さま
人物は、顔から描かせると失敗しやすい題材です。まずは手足のある簡単な形から始め、正面向きだけでかまいません。動きは、腕と足の向きを変えるだけで表せます。うまく描けたときに「上手」ではなく「何をしているところか分かるよ」と伝えると、お子さまは描く目的をつかめます。
道具や課題の集め方については絵画対策の本と問題集もあわせてご覧ください。指示を聞き取る力に不安があるときは聞き取りを、ご家庭に合わせた進め方は家庭学習サポートでご相談ください。
まとめ
受験の絵画は、上手さより「指示を聞く・楽しむ・最後まで仕上げる」姿勢が見られます。家庭では否定せず自由に描かせ、題に沿う練習と道具への慣れ、豊かな体験を。親が描いたりダメ出ししたりは禁物。のびのび描ける子が、いちばん輝きます。
Q. 絵が下手でも大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。見られているのは絵の上手さではなく、指示理解・意欲・発想・完成させる力です。のびのび楽しんで描けることのほうが大切です。
Q. 家では何を描かせればいいですか?
A. 「楽しかったこと」「家族のお出かけ」などテーマを決めて描かせると、題に沿う力が育ちます。豊かな体験が題材を増やします。
Q. 親はどこまで手伝っていいですか?
A. 代わりに描くのは禁物です。道具の準備やテーマの提案までにとどめ、描く中身は子どもに任せて、興味を持って見守りましょう。
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