【東京女学館小学校】の建学の精神と教育目標
東京女学館は、1886年(明治19年)に女子教育奨励会の設立趣意書が発表されたことから始まりました。当時は男子の教育が急速に進む一方で、女子の教育が大きく遅れていました。そこで「速やかに女子のための教育を興し、男子の教育と並行させる」ことが急務とされ、渋沢栄一をはじめとする有志が設立に加わっています。1888年(明治21年)には英国人教師を迎えて開校しました。
学園全体の教育目標は「高い品性を備え、人と社会に貢献する女性の育成」です。そのうえで小学校では、育てたいお子さまの姿を次の3つで示しています。
- 丈夫で明るくねばり強い子
- よく考えて行動し責任を果たす子
- 心ゆたかなやさしい子
さらに、お子さま自身が毎日の学校生活で意識するための「よい子のめあて」として、「いつも明るく元気な子」「よく考えくふうする子」「心ゆたかなやさしい子」「すすんで働き責任をもつ」「物をたいせつにする子」という5つが掲げられています。
ここで注目していただきたいのは、「成績」や「学力」という言葉がひとつも出てこないことです。並んでいるのは「明るさ」「ねばり強さ」「考えて行動すること」「責任」「やさしさ」といった、毎日の生活のなかで育つ力ばかりです。学校がどこを見ているのかが、とてもよく分かる言葉選びだと思います。
【東京女学館小学校】はミッションスクールではありません
受験を検討されるご家庭から、いちばん多く行き違いが起きるのがここです。東京女学館小学校は、キリスト教主義(ミッションスクール)の学校ではありません。
公式サイトの学校概要に掲げられているのは、1888年の設立時に定められた「国際性を備えた、知性豊かで気品ある女性の育成」という建学の精神と、「高い品性を備え、人と社会に貢献する女性の育成」という教育目標です。宗教教育を教育の柱として掲げる記述はありません。
創立にかかわった人物として英国聖公会の主教の名前が残っているため、宗教色のある学校だと受け取られることがあります。ただ、それは明治期に女子教育を興そうとした人たちが集まった経緯を示すものであって、いまの教育課程に宗教の時間が置かれているという意味ではありません。
この違いは、願書や面接で志望理由を書くときにそのまま効いてきます。「キリスト教の精神に共感して」と書いてしまうと、学校が掲げていないものを理由にしていることになり、学校を調べていないことが伝わってしまいます。志望理由は、建学の精神の3つの言葉と、後でご紹介する特色ある教育に結びつけて組み立ててください。
【東京女学館小学校】の特色ある教育「すずかけ」「つばさ」「とびら」
東京女学館小学校の教育を語るうえで外せないのが、この3つの柱です。名前だけを覚えるのではなく、それぞれが何を育てようとしているのかまで押さえておいてください。
すずかけ:日本の文化と作法から品性を育てる
「日本人女性としての高い品性」を育てることをねらいとした取り組みです。華道、茶道、邦楽(箏曲)、着付け、日本舞踊、お箸の使い方、座禅、百人一首、テーブルマナー、昔のお話や昔の遊びなど、日本の文化と作法にふれる活動が並びます。テーブルマナーは、5年生で和食、6年生で洋食の礼儀作法を学びます。
つばさ:自分で選び、判断する体験と情報教育
「つばさ」は国際化をイメージして名づけられた取り組みで、お子さまが自ら判断し、選択できるように複線型で組まれています。体験活動と情報教育の2つで構成され、情報教育ではパソコンやiPadを使いながら、学年ごとに段階を追って力をつけていきます。1年生は反対語を絵で表す活動から始まり、2年生は絵日記をローマ字入力で、3年生は体験学習の感想文、4年生は大使館訪問のまとめ、5年生は調べ学習のレポート、6年生は修学旅行のまとめへと進みます。
とびら:使うための英語と国際性
「コミュニケーションの手段としての英語」を身につけ、国際社会で活躍できる女性リーダーを育てることをねらいとしています。低学年は歌やリズム遊びで英語の音や表現に慣れ親しみ、インターナショナルスクールとの交流も行います。中学年はゲームや寸劇で話す力・聞く力を伸ばし、高学年は寸劇やプレゼンテーション、英語劇を通じて文法や語彙を高め、読む・書く力も養います。夏にはイングリッシュキャンプ(国内研修)やタスマニアでの英語研修も用意されています。
【東京女学館小学校】のインクルーシブ・リーダーシップと「学び続ける力」
東京女学館小学校が近年とくに前面に出しているのが「インクルーシブ・リーダーシップ」という考え方です。学校はこれを「共感、創造性、協力などの相互互恵関係に支えられた、すべての人のためのリーダーシップ」と説明しています。
前に立って引っぱる子だけがリーダーではない、という考え方です。女子一貫教育という環境を生かして、お子さまの多様な可能性を引き出し、「共同体の中で自分を生かし、他者をも生かすという共生の感覚」を育てることを目指しています。育てたい力として挙げられているのは、役割意識、責任感、協力、助け合う気持ち、思いやり、正義感です。実際の場面としては、学校行事、日常の係活動や委員会活動、話し合いやグループ学習などの協働的で課題解決的な学習が挙げられています。
もうひとつの柱が「学び続ける力」です。学校は「習得・活用・探究は世界標準の学び」と位置づけ、授業で学んだことを知識・技能で終わらせず、活動的な学習経験を通して自ら進んで学び続ける力にすることを掲げています。学校行事や校外学習を教科の学習と結びつけたり、反復学習・協働学習・応用学習に取り組んだり、課題を見つけて解決する学習や、情報を集めて発信する学習を進めたりする形です。
この2つは、考査の内容とまっすぐつながっています。とくに親子で取り組む課題や行動観察は、この学校が大切にしている「協力」「役割」「話し合い」がそのまま見られる場です。考査の対策や試験内容の記事とあわせて読んでいただくと、準備の方向がはっきりします。
【東京女学館小学校】の校風は、ご家庭の準備にどう関わるか
公式の情報から見えてくる校風は、ひとことで言えば「日本の文化を土台にしながら、外に開いていく」というものです。すずかけで作法と品性を身につけ、とびらで英語と国際性にふれ、つばさで自分で選んで判断する経験を積む。この組み合わせが、この学校らしさをつくっています。
学校の規模も校風に関わっています。2026年4月1日現在の児童数は447名、教職員数は53名で、1953年から2学級制がとられています。学年2クラスという小さな規模なので、6年間で先生方がお子さまをよく見てくださる環境です。所在地は東京都渋谷区広尾3丁目7番16号です。
ご家庭の準備という意味では、次の3つを意識していただくと、この学校とのずれが起きにくくなります。
- 作法やあいさつを、受験のためではなく毎日の習慣として整える
- お子さまが自分で選んで決める場面を、家庭のなかにつくる
- お手伝いや係のように、役割を持って最後までやりきる経験を積む
どれも特別な教材はいりません。学校が掲げている言葉と、ご家庭の毎日が同じ方向を向いているかどうかが大切です。受かるのはどんな子かの記事も、あわせてご覧ください。
【東京女学館小学校】の教育方針についてよくあるご質問
Q. キリスト教の家庭でないと不利になりますか
A. 東京女学館小学校はキリスト教主義の学校ではないため、ご家庭の信仰が選考に関わるという考え方そのものが当てはまりません。学校が掲げているのは建学の精神と教育目標であり、そこに宗教の記述はありません。志望理由も、宗教ではなく教育の中身に結びつけて書いてください。
Q. 英語ができないと入学後に苦労しますか
A. 「とびら」は低学年で歌やリズム遊びから始まる組み立てになっており、入学時点で英語ができることを前提にした設計ではありません。むしろ大切なのは、知らないことに前向きに向き合えるかどうかです。
Q. 「品性」「気品」と言われると、家庭のしつけが厳しく問われそうで不安です
A. 学校が示している「よい子のめあて」を読むと、求められているのは「明るく元気」「よく考えくふうする」「心ゆたかでやさしい」「すすんで働き責任をもつ」「物をたいせつにする」という、生活の基本ばかりです。特別な礼儀作法を先取りする必要はありません。あいさつ、返事、履き物をそろえる、使ったものを片づけるといったことを、家庭で当たり前にしていけば十分です。
Q. 女子校であることは、どんな意味がありますか
A. 学校は女子一貫教育という環境を、お子さまの多様な可能性を最大限に引き出すための条件として位置づけています。役割が性別で固定されにくいぶん、リーダーも記録係も進行役も、すべて自分たちで担うことになります。インクルーシブ・リーダーシップという言葉は、その日常を指しています。
なお、この記事の内容は東京女学館小学校の公式サイト(2026年8月時点)にもとづいています。数値や制度は年度で変わることがありますので、最新の情報は学校の公式サイトと募集要項でご確認ください。受験全体の流れは受験情報総まとめガイドでご確認いただけます。
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