東京都練馬区に位置し、緑豊かな環境の中で「菊の子」たちを育む東京学芸大学附属大泉小学校。
国内初の国際バカロレア(IB)認定の国立小学校としても知られ、例年15倍前後という非常に高い倍率を誇る人気校です。
受験をお考えの保護者様にとって、志望校の行事は校風を知るための貴重な手がかりとなりますが、中でも「運動会」は、その学校が大切にしている教育理念が最も身体的な形で現れるイベントだと言えるでしょう。
しかし、東京学芸大附属大泉小学校の運動会は、単に足の速さを競ったりダンスを披露したりするだけの一般的な行事とは一線を画しています。
そこには、「生活団」と呼ばれる独自の縦割り組織や、夏に行われる過酷な遠泳訓練で培った精神力が深く関わっているのです。
なぜ東京学芸大附属大泉小学校の運動会はこれほどまでに熱く、そして教育的意義深いのか。
本記事では、受験のプロフェッショナルな視点から、パンフレットだけでは見えてこない運動会の実像と、そこから読み解くべき「求められる児童像」について深掘りしていきます。
【東京学芸大附属大泉小学校】運動会の見学はできる?
小学校受験対策において「百聞は一見に如かず」と言われる通り、実際の学校行事を見学することは、お子様がその学校に馴染めるかどうかを判断する上で非常に有効です。
しかし、結論から申し上げますと、東京学芸大学附属大泉小学校の運動会は、原則として受験生やその保護者を含む一般の方への公開を行っていません。
これは、同校が教育研究機関としての役割を担っており、児童の安全確保とプライバシー保護、そして研究環境の維持を最優先事項としているためです。
近年のセキュリティ意識の高まりもあり、校内への立ち入りは在校生のご家族や学校関係者に厳格に限定されています。
「それでは校風を知る術がないではないか」と落胆される親御さんもいらっしゃるかもしれませんが、諦める必要はありません。
学校側はこの「閉ざされた環境」の代替として、デジタル技術を活用した情報発信に力を入れています。
例えば、学校説明会のオンデマンド配信や、公式ウェブサイト上での詳細な活動レポートの公開などがその一例です。
特に公式サイト内の「活動レポート」や「学校生活」のページでは、運動会当日の児童の表情や、そこに至るまでの練習過程が写真付きで紹介されることがあります。
私たち専門家の視点からアドバイスさせていただくと、現地に行けないからといって情報収集を怠るのは禁物です。
公開されている動画やレポートの行間から、「子どもたちがどのように協力し合っているか」「先生はどのように児童を見守っているか」を読み解くことは十分に可能です。
例えば、写真に写る高学年の児童が下級生の手を引いている姿一つをとっても、同校が重視する「異学年交流」の深度を推し量ることができます。
見学ができないという制約を嘆くのではなく、与えられた情報源を徹底的に分析する姿勢こそが、大泉小学校合格への第一歩となるのです。
【東京学芸大附属大泉小学校】運動会の特色
東京学芸大学附属大泉小学校の運動会を語る上で、最も象徴的なキーワードとなるのが「生活団(せいかつだん)」です。
一般的な小学校では学年やクラス単位でチーム分けが行われますが、大泉小学校では1年生から6年生までが混ざり合った縦割りの異学年グループである「生活団」が活動の基盤となります。
運動会当日は、この生活団が「黄組」「赤組」「青組」の3色に分かれ、学年の枠を超えた熱い戦いを繰り広げます。待機場所となるテントの中でも、同級生ではなく、生活団の仲間たちと肩を並べて応援することになります。
このシステムの最大の特徴は、高学年、特に6年生に求められるリーダーシップの質にあります。
一般的な学校のように同級生同士で盛り上がるだけでなく、6年生は入学して間もない1年生に対しても、競技のルールを教え、応援の仕方を指導し、時には不安がる下級生の心のケアまで行わなければなりません。
運動会当日、応援合戦で声を枯らしてリードするのは最上級生の役割ですが、その視線の先には常に下級生たちの姿があります。
このような環境下では、単なる身体能力の高さよりも、「周囲への気配り」や「集団をまとめる力」が自然と育まれていくのです。
また、競技種目にも大泉ならではの伝統が色濃く反映されています。
特に高学年女子による「棒倒し」や、男子による「騎馬戦」は、近年安全面への配慮から実施を見送る学校が増えている中で、同校が大切に守り続けている名物種目です。
これらの競技は、個人の力だけでは決して勝利できず、チーム全体の戦略と団結力が試されます。
さらに、運動会のクライマックスを飾る「大泉リレー」は、各色の選抜メンバーがバトンをつなぐ対抗リレーであり、会場全体が一体となる熱気に包まれます。
これらの特色あるプログラムは、すべて「自ら学び、支え合い、ともに生きる」という学校目標を具現化したものであり、運動会という行事そのものが一つの巨大な教育カリキュラムとして機能していると言えるでしょう。
【東京学芸大学附属大泉小学校】「組体操」に見る信頼と鍛錬の集大成
東京学芸大学附属大泉小学校の運動会において、観客の心を最も揺さぶり、会場を静寂と感動で包み込むのが、6年生全員による「組体操」です。
これは単なる体操の演目ではなく、6年間の小学校生活で培ってきた身体能力、精神力、そして仲間との信頼関係を証明する卒業制作のような位置づけとされています。
国立小学校の中でも、これほど本格的かつ規模の大きな組体操を継続している学校は少なく、そこには大泉小学校ならではの「鍛錬」の文化が背景にあります。
この組体操を成功させるための土台となっているのが、夏に行われる伝統行事「遠泳(臨海学校)」です。
5・6年生は千葉県富浦の海で、最長60分間にも及ぶ「大遠泳」に挑戦します。
足のつかない海の中で、仲間と声を掛け合い、隊列を乱さずに泳ぎ切るという過酷な経験を経た子どもたちは、強靭な精神力と「仲間を信じて身を委ねる」という深い信頼感を獲得します。この夏の経験があるからこそ、秋の運動会での組体操において、互いの体重を支え合い、一糸乱れぬ演技を披露することができるのです。
受験対策の現場で子どもたちを見ていると、現代の子どもたちは身体接触を伴う協力作業に不慣れな傾向があります。
しかし、大泉小学校の組体操では、泥だらけになりながら土台となる子が歯を食いしばり、その上に立つ子が指先まで神経を尖らせてポーズを決めます。
そこには「自分が崩れれば仲間も崩れる」という責任感と、「仲間が支えてくれるから挑戦できる」という安心感が共存しています。
プロの目線で見ても、この組体操は単なるショーではなく、児童の内面的な成長を促すための高度な教育プログラムであり、大泉小学校が目指す「たくましく、清い心の子ども」の姿そのものだと言えます。
【東京学芸大学附属大泉小学校】入試対策に直結する「行動観察」の視点
「運動会と入試に何の関係があるの?」と思われるかもしれませんが、実は大泉小学校の運動会には、入試の重要科目である「行動観察」や「運動テスト」を攻略するためのヒントが凝縮されています。
大泉小学校の入試では、ペーパーテストの難易度は標準的である一方で、集団の中での振る舞いや、指示を正しく理解して動く力が厳しく問われます。
運動会で見られる児童たちの姿は、まさに学校側が「入学時に求めていた資質」が6年間でどのように開花したかの答え合わせのようなものです。
具体的に入試とリンクする要素として、「協調性」と「指示行動」が挙げられます。
大泉小学校の入試における行動観察や模倣体操では、ダンスの上手さや運動神経の良さよりも、「前向きに参加しているか」「先生の指示をしっかり聞いているか」「周りの子と協力できているか」が評価の対象となります。
これは、運動会において生活団の中で自分の役割を果たそうとする姿勢と全く同じです。
運動会で上級生が下級生を励ますように、入試のグループ活動でも、困っているお友達に声をかけたり、ルールを守れない子に優しく注意を促したりできる子が、同校の求める「菊の子」の素質を持っていると判断されるのです。
また、大泉小学校の入試では「口頭試問」の難易度が高いことでも知られています。「お友達とトラブルになったらどうしますか?」といった正解のない問いに対し、自分の言葉で考えを伝える力が求められます。
これは、運動会やオペレッタなどの行事を児童主体で創り上げる校風と無関係ではありません。先生からの指示を待つのではなく、「自分たちはどうしたいのか」を常に考えさせる教育が行われているため、入試の段階でもその萌芽が見られているのです。
したがって、ご家庭での対策においても、単に運動能力を高めるだけでなく、チームスポーツや遊びを通じて「負けた時の態度のコントロール」や「仲間を応援する気持ち」を育むことが、合格への近道となります。
【東京学芸大学附属大泉小学校】「菊まつり」へと続く行事のつながり
運動会が終わると、大泉小学校の子どもたちの関心は次なる一大行事「きくまつり(開校を祝う会)」へと向けられます。
実は、かつては運動会と菊まつりが同時期に行われていた歴史もあり、これらは単独のイベントではなく、秋の教育活動として一連の流れの中に位置づけられています。
運動会で高まった生活団の結束力は、そのまま「菊づくり」や「菊の子汁づくり」という活動へと引き継がれていくのです。
大泉小学校では「菊の子」という愛称が示す通り、1年生から6年生まで一人一鉢の菊を育てる伝統があります。
4月の「和楽会」で顔合わせをした生活団のメンバーは、春の挿し芽から始まり、夏休みの水やり当番などを経て、秋に美しい花を咲かせるまで協力し合います。
運動会で体をぶつけ合いながら深めた絆は、植物を育てるという静かで粘り強い活動の中で、より繊細で温かいものへと変化していきます。
特に11月の「きくまつり」で行われる「菊の子汁づくり」では、自分たちで育てた野菜を調理し、同じ釜の飯を食べるという体験を通じて、家族のような結びつきが生まれます。
受験生の保護者様にぜひ知っておいていただきたいのは、大泉小学校が「行事で子どもを育てる」ことを明確な教育方針としている点です。
運動会での「動」の学びと、菊づくりでの「静」の学び。この両輪が機能することで、知力だけでなく、感性や人間性を兼ね備えた子どもが育つのです。
入試の面接や願書において、単に「勉強ができる」ことをアピールするのではなく、こうした学校独自の行事サイクルを理解し、「我が子もその輪の中で成長させたい」という具体的な熱意を伝えることができれば、先生方の心に強く響くはずです。
東京学芸大附属大泉小学校の運動会は何が違う?受験前に知っておきたい行事まとめ
ここまで、東京学芸大学附属大泉小学校の運動会について、その独自性や教育的背景、そして入試との関連性について詳しく解説してきました。
最後に、改めてこの行事が持つ意味と、受験に向けた心構えを整理しておきましょう。
- 一般公開なしの「聖域」であること: 運動会は見学不可ですが、それは児童が活動に集中できる環境を学校が守り抜いている証拠です。公開情報から校風を読み解くリサーチ力が親御さんには求められます。
- 「生活団」こそが大泉の魂: 1年生から6年生までの縦割り活動が、運動会の応援や競技のすべてに浸透しています。入試の行動観察でも、この集団生活に適応できる「協調性」や「リーダーシップの芽」が見られています。
- 「強さ」と「優しさ」の両立: 騎馬戦や組体操に見られる力強さと、下級生を導く優しさ。このバランスこそが「菊の子」の理想像です。ペーパーテストの点数だけでなく、他者を思いやる心の成長が入試の合否を分ける鍵となります。
大泉小学校の運動会は、単なる勝ち負けを競うイベントではありません。
それは、異年齢の子供たちが互いに支え合い、自己の限界に挑み、集団としての喜びを分かち合う「人間形成の場」です。
受験をご検討の皆様におかれましては、こうした行事の背景にある教育理念を深く理解し、お子様がその素晴らしい環境の一員として輝く未来をイメージしながら、日々の準備を進めていただければと思います。
倍率は決して低くはありませんが、学校が求める子ども像を正しく理解し、家庭教育の中で育んでいくことが、合格への確かな道筋となることでしょう。
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