1874年に創立された慶應義塾幼稚舎は、慶應義塾の教育理念のもと、知性・体力・精神のバランスが取れた人材の育成を目指す小学校です。受験勉強に縛られない自由な学びを重視し、スポーツや芸術、国際交流など幅広い分野で児童の成長を支援します。
そんな人気難関校である慶應義塾幼稚舎の受験偏差値は、いったいどれほどのものなのでしょうか。お受験のプロが詳しく解説します。
小学校受験に偏差値は存在するのか
まず初めに、小学校受験における偏差値の取り扱いについて解説します。小学校受験において「偏差値」という明確な指標は存在しますが、中学・高校受験の偏差値とは大きく異なる性質を持っています。
小学校受験では、学力だけでなく、お子様の性格や個性、家庭の教育方針、保護者の価値観なども重要な選考基準となります。そのため、中学・高校受験のような「学力偏差値」ではなく、模擬試験の結果や合格率をもとにした「合格判定」や「難易度ランク」として示されるのが一般的です。
これらの偏差値は、試験内容の分析や合格者の実績に基づいた推定値であり、各学校の正式な選考基準とは異なるため、あくまで参考値として扱う必要があります。
また、私立小学校の入試では、ペーパー試験以外にも行動観察や願書・面接(保護者含む)が重視されるため、学力だけではなく、総合的な評価を受けることを理解しておくことが重要です。
【慶應義塾幼稚舎】偏差値
前述の通り、小学校受験には公式な偏差値は存在しませんが、受験塾や幼児教室などで公表される「難易度ランク」を参考にすると、慶應義塾幼稚舎の入学難易度はトップレベルと考えられます。
私立小学校の入試難易度を示す際には、難関中学の合格実績、競争率、入試の内容、志願者層などが参考になります。
一般的に、小学校受験の難易度を相対的に評価するために「偏差値換算」をする場合、慶應義塾幼稚舎は偏差値70前後と推測されます。これは、同じ東京都内の人気私立小学校の中でもトップ・最難関レベルに位置すると考えられます。
【慶應義塾幼稚舎】偏差値が高い理由
慶應義塾幼稚舎は、日本の私立小学校の中で最も合格が難しいとされる学校です。その最大の理由は、志願者の層の厚さにあります。
幼稚舎には、代々慶應に通う縁故家庭の子息が多数受験するほか、スポーツ界・芸能界・財界・政界で成功を収めた家庭の子どもたちも受験します。
さらに、各受験塾のトップ層がこぞって挑戦し、「私立小学校を受験する=慶應義塾幼稚舎を受験する」と言われるほどの人気を誇ります。
試験では、学力試験(ペーパーテスト)は課されず、絵画とサーキットと呼ばれる運動テストが中心ですが、両試験とも「本当にこれが未就学児か?」と驚かされるレベルの仕上がりを見せてくるのも慶應義塾幼稚舎受験生の特徴です。
また、保護者・親子面接は行われないことから、願書のみで入学への想いを伝えなければいけない点も、試験をより難しいものにしています。
さらに、例年の倍率は10倍以上で、合格者は約144名と極めて狭き門。これらの要因が重なり、慶應義塾幼稚舎の受験は、日本最難関の私立小学校と言われているのです。
こうした理由から、慶應義塾幼稚舎は最難関校であることは揺るぎなく、常にトップの競争率をひた走っているのです。
【慶應義塾幼稚舎】偏差値を他の小学校と比べてみる
想定偏差値70前後相当と推測される慶應義塾幼稚舎を、受験時に併願されることが多いと言われる他の私立小学校と比較してみましょう。
・慶應義塾横浜初等部:偏差値 65~68(神奈川県)
・早稲田大学系属早稲田実業学校初等部:偏差値 61~63(東京都)
・学習院初等科:偏差値 59~61(東京都)
・青山学院初等部:偏差値 58~60(東京都)
・暁星小学校:偏差値 58~60前後(東京都)
・立教小学校:偏差値50~55前後(東京都)
・雙葉小学校:偏差値58~60前後(東京都)
・白百合学園小学校:偏差値 58~60前後(東京都)
・森村学園初等部:偏差値50~55前後(神奈川県)
これらの学校は慶應義塾幼稚舎と比較され、実際の受験期には併願校となる場合も多いです。それぞれ特色ある教育方針を持ち、受験においては家庭環境や教育理念の適合性が問われる点も共通しています。
慶應義塾幼稚舎を受験するご家庭のほとんどが併願するのが、慶應義塾横浜初等部です。
慶應義塾横浜初等部学校法人慶應義塾が2013年に開校した横浜市の小学校です。小中高一貫教育の中で、国際教育・グローバル教育に力を入れています。卒業後は湘南藤沢中等部・高等部に進学します。
その他、私立小学校御三家と呼ばれる「学習院初等科」、「青山学院初等部」も併願先となります。また、居住エリアの問題さえクリアさえしていれば早稲田大学系属早稲田実業学校初等部も視野に入ります。
この3校は一部受験日が重なる可能性があるため、受験スケジュールを慎重に組み立てる必要があります。
また、先述の「学習院初等科」と「立教小学校」は入学試験にペーパー試験を課されないノンペーパー校のため、試験形式の類似性から選択されます。
*「青山学院初等部」も長らくペーパーテストを実施していませんでしたが、ここ数年はペーパー試験を行う方式に転換され、この傾向は今後も続くと予想されています。
暁星小学校、雙葉小学校、白百合学園小学校はそれぞれ高校までの一貫校ですが、入学試験が大変難関かつ入学難易度も高いことで一致しています。
そのため、多くのご家庭が早慶受験の併願先として考える学校群です。逆に言えば、これらの難関男女別学校に合格できるレベルのお子様でないと、慶應義塾幼稚舎の受験には太刀打ちできないとも言えます。
森村学園初等部は、創設者である森村市左衛門氏が福沢諭吉氏を敬愛していたことを背景に、教育観や教育理念に大きな影響を受けたと言われています。
学校法人こそ異なりますが、方針が類似していることもあり、慶應義塾幼稚舎本命のご家庭の多くは10月試験実施の「神奈川校」として森村学園初等部を選びます。
併願先として例に挙げた学校群は、併願先と呼ぶにはあまりにも難関の学校ばかりです。多くのご家庭の第一志望・本命校として受験に挑む学校でもありますので「併願先だから」と油断をしていると決してご縁は結べません。
【慶應義塾幼稚舎】偏差値からみる入学の難易度 まとめ
慶應義塾幼稚舎は、その偏差値はもちろん併願先となる類似偏差値帯の学校群もトップオブトップの超難関レベルでありました。
慶應義塾幼稚舎を第一志望としながらも、共通点(大学一貫校、難関レベル、試験方式など)のある併願先を見つけ、スケジュールや試験対策を戦略的に組み立てる必要があります。
日本最難関私立小学校である慶應義塾幼稚舎への入学を真剣に目指すのであれば、親御様としてもトップクラスの努力が必要であり、早い段階から準備を重ねる必要があるでしょう。