慶應義塾横浜初等部は、慶應義塾2校目の初等教育機関として、自由と自律の精神を大切に育んでいる伝統校です。受験のない内部進学制度を有し、お子様たちはのびのびと学び、多様な経験を通じて心と体の両面から成長を遂げていきます。
そんな慶應義塾横浜初等部の入試は、日本の私立小学校トップの倍率を誇り、例年14倍前後と大変難関となります。そんな難関試験のうち、第一次試験となるのが、本記事で解説するペーパーテストです。
このペーパーテストで上位3割に入らないと、二次試験(絵画工作、集団、運動テスト)に進むことはできません。そのため、慶應義塾横浜初等部の合格を手にするためには、日本トップレベルのペーパーテストを突破する必要があるのです。
この記事では、その内容や評価の観点、そしてご家庭での効果的な準備方法について、プロが徹底解説していきます。
【慶應義塾横浜初等部】ペーパーテストとは
慶應義塾横浜初等部の入試では、まず一次試験となるペーパーテストが実施されます。それに合格した受験生だけが二次試験となる「運動」「集団」「絵画・制作」のテストを受験することができます。
一次試験となる「ペーパーテスト」は、表面的にはスタンダードな出題形式を取っていますが、そこに巧みなひねりや工夫が凝らされているのが大きな特徴です。問題文の理解に加え、複数の選択肢から適切な判断を求められる設問が多く、知識の詰め込みだけでは対応できません。
さらに、一部の問題では具体物(絵や配置図など)を使ったり、異なる色の筆記具(クレヨン、クーピー、ポンキー、青、赤、茶など)を使い分ける必要があったりと、注意力・指示理解力・運用力が問われる場面もあります。
慶應義塾横浜初等部の人気や伝統、そして試験実施日程により、例年この試験には全国トップクラスの受験生が多数集まります。
そのため、二次試験に進むためには「ほぼ満点」に近い正答率が必要と言われています。実際、一次試験の合格者は全体の上位約30%程度に限られ、わずかな失点で涙をのむ受験生も多く、出題内容や日時が異なれば合格者はガラッと入れ替わると言われている程僅差の戦いとなっています。
そのため、慶應義塾横浜初等部のペーパーテストは「日本一過酷、日本一の難易度が高い」と称されることもあるのです。

【慶應義塾横浜初等部】ペーパーテストが出題される理由
慶應義塾横浜初等部が、あえてこのような高難易度のペーパーテストを一次試験として課している理由は、「基礎力」と「総合的な知力」を早期に見極めるためだと考えられます。
一次試験では、限られた時間内に情報を読み取り、正確に理解し、論理的に考え、そして適切な形式で答える力が求められます。
これは、今後の学習を支える“学習体力”そのものであり、それが備わっているかどうかを短時間で判断するために、厳しく精緻な設問構成が取られているのです。
また、あえて多様な分野(数・言語・図形・記憶・推理)を組み合わせて出題することで、偏りのない知的バランスや“対応力”も評価されていると推察されます。
そのため、表面的なトレーニングや暗記だけでは乗り越えられず、日常的な思考力・言語力・集中力が問われるという意味で、本当の意味での“思考する力”が試されるペーパーテストだと言えるでしょう。
【慶應義塾横浜初等部】近年の具体的な試験内容
以下は慶應義塾横浜初等部で過去に実施されたペーパーテストの代表的な課題例です。年によって構成や設問の形式は多少異なりますが、出題の意図や難易度は一貫しており、試験の本質を理解するための参考として非常に有効です。
※慶應義塾横浜初等部の運動テストは、実施日、実施グループによって内容が一部異なります。そのため、こちらに掲載した試験内容もあくまで参考としてご利用ください。
2024年度実施ペーパーテスト
■主な出題項目
【系列完成(男女共通)】
視覚情報のパターンを読み取り、規則に沿って正しい選択肢を選ぶ問題。具体的には、ブドウを食べていく順序や、色・形・数の変化に着目しながら正しい絵を選ばせる形式。
【観察力(男女別)】
女子は色と形の細かな変化を捉える問題、男子は並び方・数・方向の違いを識別。
【推理・思考(絵の順番)】
物語の流れを4コマの絵で再構成する問題。因果関係や時間軸を理解する力が必要。
【お話の記憶(男女別)】
イラスト付き長文を聞き取り、色・場所・人物の関係性を記憶して選択する設問。
■特徴
特に注目すべきは、お話の記憶問題のボリュームと構造で、記憶+推理の複合型。文章の聞き取りから得た情報を図や選択肢と照合する必要があり、情報処理の精度とスピードが問われました。
2023年度実施ペーパーテスト
■主な出題項目
【推理・思考(四方図)】
4つの絵の中からルールに従って正しい位置を選ぶ問題。図形・配置・法則の理解を必要となるような内容でした。
【数量(対応)】
女子は材料の数・種類をカウントして正答、男子は抽象概念を数値と結びつける形式。
【お話の記憶(男女別)】
聞いたお話をもとに、色のついた枠内の質問に正確に答えます。細かな描写や心情の変化など、読解と記憶を合わせた問題。
■特徴
この年度は数量系問題に重きが置かれており、特に“応用力”が問われる構成となりました。お話の記憶も非常に長く、情景や因果の流れを正確に捉える力が必要でした。
2022年度実施ペーパーテスト
■主な出題項目
【推理・思考(絵の順番)】
動作の前後関係や因果のつながりを見極めて、4つの絵を正しい順序に並べます。
【お話の記憶(男女別)】
お話の中に登場する出来事・人物・背景を記憶し、詳細に関する質問に答えます。
【観察力】
似ている絵の中から1つだけ異なる絵を見つけます。形の向きや細部の違いに注目する必要あり。
■特徴
絵の順番問題は細かな前提理解と因果の認識が必要で、単なる記憶型とは一線を画していました。お話の記憶も文章量が多く、複数情報の統合的理解が問われました。
2021年度実施ペーパーテスト
■主な出題項目
【観察力・推理・思考】
物の動きや変化を捉え、正しいものを選ぶ形式。位置や長さ、方向の変化を読み解きます。
【お話の理解】
お話の中の会話や描写を聞き取り、登場人物の発言や行動の理由を推測する問題。
【お話の記憶】
買い物や調理の場面を題材に、エピソードの順序や理由を記憶・理解して答えます。
【点図形】
点の位置や構成を観察し、規則に従って正答を導く空間認識型問題。
■特徴
この年はお話の理解系が多く、聞く力+考える力が必要とされました。場面の細部に注目しながら、因果を捉えて答える構造が際立っていました。
【慶應義塾横浜初等部】家庭でできるペーパーテスト対策
慶應義塾横浜初等部をはじめとする、私立小学校受験におけるペーパーテストの対策というのは、単に机に座り大量のペーパーを解くことではありません。
単純かつ分野の定まっているようなペーパー試験であればこのような方法でもなんとか乗り切れるかもしれませんが、慶應義塾初等部のような工夫された多彩な出題内容を課す試験であれば、なおのこと反復だけでは突破できないのが現と言えるでしょう。
ここからは、ご家庭の中で取り組めるペーパーテスト対策の工夫を、具体的な例を持ってご紹介します。どれも簡単に取り組めるものばかりですが、やり始めることで日々の学習の定着が進み、解答力もグッと伸びる方法ばかりです。ぜひ試してみてください。
絵本の“読み聞かせ+質問タイム”で聞く力を養う
慶應義塾横浜初等部のペーパーテストでは「聞く力」が重要視されるため、日々の絵本の読み聞かせが有効です。
ただ読むだけでなく、読み終わった後に「○○ちゃんはどう思った?」「登場人物はなぜ怒ったのかな?」と質問を投げかけることで、内容理解・感情理解・記憶の定着が促進されます。
試験の「お話の記憶」「お話の理解」といった出題形式に自然に慣れることができ、語彙力も増やせます。
お買い物ごっこで数と推理の基礎力をつける
日常の中で、買い物ごっこを使って数や論理の感覚を身につける練習をしてみましょう。「100円あるから、50円のリンゴを2つ買えるかな?」「リンゴは1個、みかんは2個、全部で何個になる?」など、親子でやりとりしながら楽しむことが大切です。
数だけでなく、“条件に合うものを選ぶ”“先を読んで考える”力も養われ、推理・数量系の問題に強くなります。
朝のお支度を“順番ゲーム”に変えて記憶力を強化
「朝のお支度は、まず顔を洗って、次に着替えて、最後にカバンを持ってね」といった日常のルーティンを、「3つの指示を順に覚えて実行するゲーム」に変えてみましょう。
順序記憶や聞き取り力が自然と鍛えられ、慶應義塾横浜初等部のペーパーテストでよく出題される“系列”“話の記憶”“指示理解”の土台が育ちます。間違えても責めずに「惜しかったね!」と声をかけて、楽しみながら継続することがポイントです。
お出かけのあとに“思い出絵日記”で観察力を磨く
公園や水族館、旅行などに出かけた後は、写真や記憶を頼りに“絵日記”を描く習慣をつけると効果的です。「何を見た?」「何が面白かった?」という親の問いかけとともに、「何色だった?」「右側にあったのは?」など、細部に注意を向ける声かけを行いましょう。
慶應義塾横浜初等部のペーパーテストで出題される「観察」「記憶」「配置理解」に役立ちますし、語りながら描くことで表現力や論理的思考力も鍛えられます。
【慶應義塾横浜初等部】日本一倍率の高いペーパーテストの正体とは!?内容や対策方法についてプロが徹底解説!まとめ
慶應義塾横浜初等部のペーパーテストは、一見するとスタンダードな設問構成に見えますが、実は非常に高い精度と深い理解を要する問題ばかりが出題されます。
しかも、上位3割しか合格できないという構造のため、満点近くを取らなければ二次試験に進むことができません。
そのため、この試験で求められるのは“圧倒的な基礎力”です。そして、それに加えて“集中力”や“聞く力”“対応力”といった非認知スキルも問われるため、受験に向けては幅広い力を段階的に養っていく必要があります。
また、どのような環境・状況下でも自分の実力を出し切れるよう、繰り返しの練習と本番さながらのシミュレーションを行うことが、最後の勝負を分ける要素となるでしょう。