慶應義塾幼稚舎は、慶應義塾の創始者・福澤諭吉の教育理念を受け継ぐ日本を代表する私立小学校です。
2017年に慶應義塾横浜初等部が開校するまで、慶應義塾が所有する唯一の小学校として絶対的な存在として君臨していました。
自由な校風のもと、児童の自主性や創造力を育む教育を実践し、様々な才能を世に送り出してきました。
そんな唯一無二の存在である慶應義塾幼稚舎ですが、「幼稚舎」という名前が原因で、さまざまな誤解が広がっています。その中でも特に多いものが「慶應義塾幼稚舎は幼稚園である」といった誤解です。
【慶應義塾幼稚舎】幼稚舎=幼稚園と誤解される理由
慶應義塾幼稚舎は、慶應義塾が運営する小学校です。「幼稚舎」という名称から、幼稚園と誤解されることがありますが、それは誤りです。
慶應義塾には系列の幼稚園は存在せず、小学校が最初の教育機関となります。そのため、慶應義塾幼稚舎に入学するには、小学校受験を経る必要があります。
「幼稚舎」という名称は、日本において一般的な「小学校」や「初等教育」と異なるため、特に初めて聞いた人には幼稚園と混同されがちです。
しかし、幼稚舎はれっきとした小学校であり、6年間の一貫教育を行う場として確立されています。幼児教育とは異なり、国語や算数をはじめとする基礎学力を養うカリキュラムが組まれており、義務教育の一環として運営されています。
【慶應義塾幼稚舎】幼稚舎に合格したい場合の幼稚園選び
慶應義塾幼稚舎の入学を目指す家庭では、小学校受験に適した幼稚園を選ぶことが多いです。
特に、名門幼稚園とされる「みこころ幼稚園」「枝光会3園(枝光会附属幼稚園、枝光学園幼稚園、枝光会駒場幼稚園)」「若葉会幼稚園」などが人気です。これらの幼稚園では、小学校受験を見据えた教育や指導が行われるため、幼稚舎の入学試験に適した準備が可能とされています。
また、近年ではインターナショナルスクールのプリスクールや英語教育に力を入れた幼稚園に通うお子様も増えており、幅広い背景を持つ児童が幼稚舎を受験しています
。さらに、保育園出身の児童も増加傾向にあり、必ずしも特定の幼稚園に通うことが合格の条件ではなくなっています。重要なのは、お子様が小学校受験に必要な基礎学力や生活習慣を身につけることです。
【慶應義塾幼稚舎】幼稚舎という独特の名称になった背景
慶應義塾幼稚舎は、1874年(明治7年)に創設され、日本最古の私立小学校のひとつです。
当時の日本にはまだ「小学校」という制度が確立されていませんでした。そのため、創設者である福澤諭吉は「幼い子どもが学ぶ場」として「幼稚舎」という名称を採用しました。
この「幼稚舎」という言葉は、中国の古典『礼記』にも登場し、「幼い子どもが初めて学ぶ場所」という意味を持っています。福澤諭吉はこの概念を参考にしながら、自らの教育理念に基づいて「幼稚舎」という名称を決めたとされています。
これにより、単なる初等教育機関ではなく、人間形成の基礎を築く場所としての役割が強調されるようになりました。
また、「幼稚舎」という名称は、慶應義塾の独自性を象徴するものでもあります。一般的な「小学校」とは異なり、単なる学力向上だけでなく、人格の育成や社会性の涵養を重視する場として、特別な意味を持ち続けています。
【慶應義塾幼稚舎】幼稚舎に関わる様々な習わし
慶應義塾幼稚舎が「小学校」ではなく「幼稚舎」という名称を持つことに関連し、特有の習わしが数多く存在します。今回はその一部を特別にご紹介します。
【慶應義塾幼稚舎】校長ではなく舎長
慶應義塾幼稚舎では、学校のリーダーである「校長」を「舎長」と呼びます。これは、幼稚舎の長としての意味を込めた独自の呼称です。この名称は、幼稚舎が一般的な小学校とは異なる独立した教育理念を持っていることを示しています。
また、慶應義塾全体においては、創立者である福澤諭吉を「先生」とし、それ以外の教職員は「君(くん)」付けで呼ばれる伝統があります。
この「君」という呼称はもともと尊称であり、身分や上下関係にとらわれず一律に用いられる点に、慶應義塾の特色が表れています。
【慶應義塾幼稚舎】入学式ではなく入舎式
慶應義塾幼稚舎では、一般的な小学校の「入学式」にあたるものを「入舎式」と呼びます。
これは「幼稚舎」という名称に由来し、単なる入学ではなく、舎の一員となることを意味する特別な式典です。
入舎式では、新入生が幼稚舎の伝統や理念を受け継ぐことを意識し、新たな学校生活をスタートさせます。
【慶應義塾幼稚舎】幼稚舎と呼ばれる幼稚園や小学校はあるのか?
「幼稚舎」という名称は、一般的には慶應義塾幼稚舎が最も広く知られています。他の教育機関で「幼稚舎」という名称を使用している例は非常に少なく、一般的には珍しいケースです。
ただし、個々の幼稚園や小学校が独自に「幼稚舎」という名称を採用している可能性はあります。しかし、日本国内において「幼稚舎」といえば、慶應義塾幼稚舎を指すことが圧倒的に多いのが現状です。
そのため、「幼稚舎」という言葉を聞いた際には、ほぼ間違いなく慶應義塾幼稚舎のことを指していると考えて良いでしょう。
【慶應義塾幼稚舎】「小学校」異なる呼び方をする学校群
日本の私立小学校では、慶應義塾幼稚舎のように「小学校」を異なる名称で呼ぶ学校がたくさん存在します。
以下に、それぞれの名称を持つ主な私立小学校を分類してご紹介します。
これらの学校は、それぞれ独自の教育理念や伝統に基づいて名称を採用しています。名称の違いは学校の特色や歴史を反映している場合が多いため、各校の公式ウェブサイトなどで詳細を確認されることをおすすめします。
初等部
まず初めに、小学校を「初等部」と呼ぶ学校群をご紹介します。
- 青山学院初等部(東京都)
キリスト教の精神を基盤とし、心の教育を大切にする青山学院の小学校です。英語教育に力を入れ、国際的な視野を持つ児童を育成します。広大なキャンパスと充実した教育環境のもと、のびのびとした学びが特徴です。
- 慶應義塾横浜初等部(神奈川県)
2017年に開校した慶應義塾2校目の小学校で、幼稚舎とは異なる教育方針を持ちます。「自ら考え、行動する力」を重視し、探究型の学びやICT教育に力を入れています。豊かな自然環境の中でのびのびと学べる点も魅力です。
- 森村学園初等部(神奈川県)
「独立自尊」の精神を重んじる全人教育を実践し、知・徳・体のバランスの取れた児童を育てます。英語教育や探究型学習にも力を入れ、国際社会で活躍できる力を養います。家庭と学校が一体となって子どもの成長を支える校風が特徴です。
- 自由学園初等部(東京都)
「生活即教育」を理念に掲げ、実践的な学びを重視するユニークな学校です。子どもたちが自ら考え、協力し合いながら学ぶ姿勢を大切にし、日常生活の中で主体性や創造力を育てる教育を行っています。
- シュタイナー学園 初等部(神奈川)
オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーの教育理念に基づく、日本で唯一のシュタイナー教育を実践する小学校です。芸術や体験を重視したカリキュラムで、子どもたちの個性と創造性を伸ばします。
h3 初等科
次に、小学校を「初等科」と呼ぶ学校群をご紹介します。
- 学習院初等科(東京都)
皇族の方々も通われる格式ある小学校で、私立小学校御三家に数えられます。日本文化や伝統を重んじながらも、時代に合わせた先進的な学びを取り入れ、バランスの取れた児童の育成を目指します。
- 聖心女子学院初等科(東京都)
カトリックの精神を基盤とし、思いやりの心を育む女子校です。英語教育が充実しており、国際感覚を身につける機会も豊富です。知性だけでなく品格や自立心を養うことにも重点を置いた教育を行っています。
- 光塩女子学院初等科(東京都)
「愛と奉仕」を教育理念に掲げるカトリック系の女子小学校です。少人数制のきめ細やかな指導が特徴で、学力の向上だけでなく、道徳心や礼儀作法を大切にする教育が行われています。
小学部
最後に、小学校を「小学部」と呼ぶ学校群をご紹介します。
- 東洋英和女学院小学部(東京都)
カナダ・メソジスト派のキリスト教精神に基づく伝統校で、礼儀や品性を重視する女子校です。英語教育が充実しており、国際社会で活躍できる人材を育てる環境が整っています。
- 国府台女子学院小学部(千葉県)
千葉県で長い歴史を持つ女子校で、礼儀作法や伝統文化を大切にしながら、現代に即した教育を実践しています。知的好奇心を育む授業と、豊かな人間性を培う指導が魅力です。
- 玉川学園小学部(東京都)
「全人教育」を掲げ、幅広い学びの機会を提供する小学校です。国際バカロレア(IB)プログラムを採用し、探究型の学びを重視。自然に囲まれた広大なキャンパスで、のびのびとした学校生活が送れます。
- 相模女子大学小学部(神奈川県)
「高い品性と豊かな学び」を理念とし、少人数教育を活かしたきめ細やかな指導を行う女子校です。アクティブラーニングやICT教育を積極的に導入し、時代に対応した教育を展開しています。
【慶應義塾幼稚舎】幼稚園?小学校?誤解される理由や命名の由来をプロが徹底解説!まとめ
慶應義塾幼稚舎は、その名前から幼稚園と間違えられることがありますが、実際には小学校です。
「幼稚舎」という名称には、創設者である福澤諭吉先生の深い想いが込められています。日本にまだ「小学校」という制度がなかった時代、福澤先生は「幼い子どもが初めて学ぶ大切な場所」として、この特別な名前をつけました。
この名称には、単に勉強を教えるだけではなく、子どもたちが人として成長し、自立できるように育てる場でありたいという願いが込められています。
また、「幼稚舎」という独自の名前は、慶應義塾幼稚舎が他の小学校とは一線を画す特別な存在であることを示しています。長い歴史と伝統を持ち、卒業後も続く強い絆が育まれる場だからこそ、この名称は大切に守られてきました。
そのため、幼稚舎を目指すのであれば、この名称を間違えないことがとても重要です。願書の記入や面接の場で誤って「幼稚園」と言ってしまうのは絶対に避けたいところです。
幼稚舎という名前に込められた想いを理解し、正しく使うことも、入学を目指すうえで大切な第一歩となるでしょう。