慶應義塾横浜初等部では、知識や技能にとどまらない“人間力”を重視した入試が行われています。特に、入試における核とも言えるのが「行動観察テスト」。この試験では、集団の中で見せるお子様一人ひとりの自然なふるまいを通じて、学校生活を送る上での基礎的な姿勢や他者との関わり方を見極めることが目的とされています。
※なお、慶應義塾横浜初等部において「行動観察テスト」という名称の試験は正式には存在せず、類似のものとして「集団テスト」が実施されています。ただし、実際には二次試験で行われる絵画工作、集団テスト、運動テストのすべてにおいて、共通して“行動観察的な視点”が強く求められます。本記事の内容は、こうした慶應義塾横浜初等部の二次試験全体に対する理解の一助としてご活用ください。
本記事では、行動観察テストの内容や出題傾向、ご家庭でできる準備についてご紹介いたします。
【慶應義塾横浜初等部】行動観察テストとはどのようなものか
慶應義塾横浜初等部の行動観察テストとは、与えられた課題に対し、複数名のグループで協力しながら取り組む中で、お子様の考え方や他者との関係性、場の理解力などを総合的に評価する試験です。
課題内容は一見「遊び」にも見えますが、その中に「指示の理解」「柔軟な思考」「社会的ふるまい」など、学校生活に必要な要素が組み込まれています。
特筆すべきは、慶應義塾横浜初等部がこうした課題を通じて、「お子様らしい素直さ」や「自分らしい判断と行動」がどのように表れるかを丁寧に見ている点です。ただ模範的に振る舞うだけでは評価につながらず、自然体の中に垣間見える“個性と調和”が大きな鍵となります。
【慶應義塾横浜初等部】行動観察テスト 幼稚舎との違いと慶應義塾横浜初等部らしさ
慶應義塾横浜初等部と慶應義塾幼稚舎は、いずれも慶應義塾が運営する初等教育機関であり、いわば「慶應の小学校」として双璧をなしています。
どちらも願書の提出はありますが、保護者面接が行われない点は共通しています。それゆえ、家庭の姿勢や親の価値観を「願書や当日の振る舞いから総合的に読み取る」というスタイルも共通点といえるでしょう。
その上で、慶應義塾横浜初等部ならではの特色が際立つのは、「これからの時代を切り拓く教育」に重きを置いたカリキュラムです。たとえば、英語教育やICT活用、SDGsなどを軸とした探究型学習が早くから導入されており、国際感覚と論理的思考力を自然に育む教育環境が整っています。
また、校舎はまだまだ新しく開放感あふれる設計となっており、自由闊達な校風とともに、お子様の自主性や創造性を引き出す設計思想が随所に見られます。こうした「未来志向の教育方針」と「都市型インターナショナルな雰囲気」が、慶應義塾横浜初等部の大きな魅力といえるでしょう。

【慶應義塾横浜初等部】慶應義塾横浜初等部が行動観察テストで測りたいもの
行動観察テストは、単にルールに従う力や集団行動の習熟度を測るものではありません。慶應義塾横浜初等部が重視しているのは、「そのお子様らしさが、集団の中でどう活きるか」という視点です。
具体的には、以下のような点が丁寧に観察されています。
【周囲との関わり方】
仲間の話をきちんと聞けるか、困っているお子様に自然と手を差し伸べられるかといった“社会性の土台”。
【主体性と自発性】
与えられた課題に対して、指示待ちではなく自ら工夫して取り組む姿勢や、新しいアイデアを生み出そうとする創造力。
【感情のコントロールと立ち直る力】
失敗や意見の違いに直面したときに、どう気持ちを切り替えられるか。試験官はその一瞬の対応にも目を向けています。
さらに、活動の中で自然に見えてくる“思考の深さ”や“ことばの選び方”、“ものごとの受け止め方”といった要素も含めて、多面的に評価されます。慶應義塾横浜初等部が求めるのは、ただ「協調的なお子様」ではなく、「自分らしさを持ちながら、他者と調和して生きていける力」を持つお子様です。
このように、行動観察テストは学力では測れない本質的な人間性や資質を見つけ出すための、非常に重要な選考手段となっているのです。
【慶應義塾横浜初等部】行動観察テスト 出題傾向と試験内容の特徴
ここからは、慶應義塾横浜初等部の入学試験において、行動観察の要素が含まれた試験内容の一部となります。
慶應義塾横浜初等部の行動観察テストは、実施日、実施グループによって出題内容が異なります。あくまで一例とご理解しつつ、具体的なイメージを持つための参考にしてください。
共同制作
グループでひとつの作品をつくる課題は、近年の絵画工作・集団テストで頻出しています。たとえば、紙コップやストロー、輪ゴムなどの素材を使って「できるだけ高いタワーを作る」や「橋を作ってビー玉を渡す」など、構造を意識しながら協力する課題が見られます。
このような場面では、最初に役割分担ができるかどうか、誰かが困っていたときに声をかけられるか、時間内に完成に向けて工夫を重ねられるかといったプロセス全体が評価されます。また、自分の意見を主張するだけでなく、他者の意見を受け入れたり、一度譲ってみたりといった“柔らかな協調性”も重要です。
特に慶應義塾横浜初等部では、周囲のお子様と比較してどれだけ前に出るかよりも、自分の役割を見つけて自然に貢献する姿勢が高く評価される傾向にあります。
リズムや模倣を用いた身体表現
音楽やリズム、模倣を取り入れた課題も運動テストにおいてよく見られます。たとえば、先生の動きやポーズを真似する「まねっこゲーム」や、特定の音に合わせて体の一部だけを動かすなど、ルールに従った柔軟な身体のコントロールが求められる場面です。
ここで大切なのは、単に“正しく動けるか”ではなく、「集中して聞く姿勢」や「周囲とテンポを合わせる力」。また、緊張や失敗に直面したときに、どう気持ちを切り替えるか、笑ってやり直せるかといった内面の落ち着きも試されているのです。
指示を受けた際のリアクションや、楽しもうとする意欲、場の空気に溶け込む柔らかさなどが総合的に見られていると考えられます。
創作と発表を含む活動
絵画工作テストにおいて、「自由制作」と「簡単な発表」を組み合わせた課題も増えています。たとえば、「自分の好きな動物を作ってください」「未来の乗り物を考えてみよう」など、限られた素材と時間で工夫しながら形にし、その後、グループ内や先生に向けて自分の作品について説明する時間が設けられることがあります。
このような課題では、「何を作ったか」よりも、「どう考えて、どんな工夫をしたのか」を言葉で伝えられることが大切です。発表の際には、姿勢や声の大きさ、話す順序、聞く態度なども細かく見られています。
また、他のお子様の発表を聞いているときの姿勢にも注意が必要です。自分の発表だけでなく、人の話に耳を傾けられるか、発表が終わったあとに拍手や一言感想を添えられるような姿勢が、評価につながる場面もあります。
【慶應義塾横浜初等部】行動観察テスト ご家庭でできる準備と日常の工夫
慶應義塾横浜初等部の行動観察テストで必要となる根本的な力は、短期間で身につけるのは難しいものです。だからこそ、日々の暮らしの中で少しずつ培っていくことが、何よりの準備となります。
保護者の方は、「失敗しないように導く」よりも、「自分のやり方で挑戦できたこと」を受け止め、認めてあげる姿勢が大切です。そうした関わりが、お子様に安心感と自信を与え、本番での自然なふるまいへとつながっていきます。
このあとは、ご家庭の中で無理なく始められる「慶應義塾横浜初等部・行動観察テスト対策」のヒントをご紹介していきます。ぜひ、気負わず楽しみながら取り組んでみてくださいね。
ルールのある遊びを日常に取り入れる
慶應義塾横浜初等部の行動観察テストでは、順番を守る、勝敗を受け入れる、意見を交わすといった“集団の中での基本的な振る舞い”が重視されます。これらは、ご家庭の中でも十分に育てることができます。
特におすすめなのが、「ルールが明確で交互に進行する」タイプのボードゲーム(UNO、オセロ、すごろく、人生ゲームなど)。こうした遊びを通して、順番を待つ忍耐力や、負けたときの気持ちの整理、相手への声がけなど、実際の試験でも見られる場面を自然に経験することができます。
遊んでいるときにお子様が怒ってしまったり、ルールを破ってしまったりしても、すぐに注意するのではなく、「悔しかったんだね」と気持ちを受け止めたうえで、「じゃあ次はどうしようか」と話し合うことで、対話の練習にもつながります。
「なぜそう思ったのか」を言葉にする習慣をつける
慶應義塾横浜初等部の入学試験では、課題に取り組む中で「自分の考えをもとに行動する力」や「その考えを他者に伝える力」が問われます。これは、日々のご家庭での会話の中でも養うことが可能です。
たとえば、選んだ絵本、好きなお菓子、描いた絵などについて、「どうしてこれにしたの?」「ここは何を表してるの?」と問いかけてみてください。答えの正しさを求めるのではなく、お子様の感じたことや理由を引き出すことが目的です。
そのときに、親御様自身も「そうなんだ、それ面白いね」「なるほど、そんなふうに見えるんだね」と共感を返すことで、発言することへの安心感が生まれます。この安心感が、発表の場面での落ち着きや自信に直結します。
異年齢の子どもたちと関わる場をつくる
集団の中では、年齢や性格の異なるお子様たちと関わる場面も多くあります。そうしたときに必要なのは、相手によって適切な関わり方を調整できる力。これも、ご家庭外の交流を通じて少しずつ身につけることができます。
具体的には、公園や習い事、地域のイベントなどでの異年齢交流が効果的です。年下の子には優しく教えたり、年上の子の話をしっかり聞いたり…そうした経験の中で、相手の立場に立って動く練習ができます。
もし兄弟姉妹がいないご家庭であれば、親御様が意識的に遊びのセッティングをすることもひとつの方法です。合同ピクニックや友人宅での遊び会などを通じて、ご家庭では得がたい“ちがう相手と関わる”体験を重ねておくと、本番でも落ち着いてふるまえるお子様に育っていきます。
【慶應義塾横浜初等部】行動観察テストとは?選考の特徴とご家庭でできる対策 まとめ
慶應義塾横浜初等部の行動観察は、決して“うまくやること”が目的ではありません。どのように取り組み、どのように周囲と関わるかという姿勢そのものが見られています。
与えられた課題の中で、正解を探すのではなく、自分の考えを持ち、周囲と調和しながら進んでいけるお子様。
そうした「これからの時代に必要とされる力」を、慶應義塾横浜初等部は静かに、しかし確かに見つめています。
慶應義塾横浜初等部が、どうして学力や運動能力だけでなく「行動」を観察することに重きを置くのか。その本質を見極め、具体的な対策を積み重ねることが合格への確実な一歩となるのです。