慶應義塾横浜初等部は、福澤諭吉の「独立自尊」の精神を礎に、知識だけでなく人間としての基盤を育む教育を実践している小学校です。お子様の個性や思考力、自主性を重視するこの学校では、入試においても「人としての力」を見極める独自の試験が行われます。
中でも注目されているのが「集団テスト」。表面的な振る舞いだけでは測れない、本質的な資質や社会性、創造力が問われるこの試験は、受験生の内面が自然に浮き彫りになる重要な選考項目です。
本記事では、慶應義塾横浜初等部の集団テストの特徴や具体的な試験内容、そしてご家庭でできる対策方法について、実例を交えてわかりやすく解説します。
※慶應義塾横浜初等部の集団テストは、行動観察や制作課題、絵画工作と組み合わさって実施されることもあり、試験形式は年度やグループによって異なる場合があります。そのため、本記事の内容は、他の記事(絵画テストや制作課題など)と一部内容が重複する可能性がありますが、あらかじめご了承ください。
【慶應義塾横浜初等部】集団テストとは
慶應義塾横浜初等部の集団テストでは、お子様が他者とどう関わるか、どのように自分の考えを表現するか、課題に対してどんな行動をとるかを、多角的に観察します。
課題は一見、遊びのように見えることも多いですが、その中にこそ、その子の「本質」がにじみ出ます。受け身ではなく、能動的に取り組みながらも周囲と調和できるかどうか。その姿勢が高く評価されるのです。
【慶應義塾横浜初等部】単なる「協調性」だけでは通用しない、慶應らしい観点とは?
集団での活動というと「協調性」が重要と考えがちですが、慶應義塾横浜初等部の評価ポイントはそれだけではありません。
むしろ、周囲に合わせるだけでなく、自分の意見をしっかりと持ち、それを伝える力や、自ら動いて状況を変えていく姿勢、さらには他者との意見の違いをポジティブに受け止める力など、もっと深い“人間力”が問われます。
また、場の空気を読みながらも流されない、自分らしい判断ができるか。こうした「個」と「集」のバランス感覚が、慶應らしさといえるでしょう。

【慶應義塾横浜初等部】近年の具体的な試験内容
近年の集団テストを見ると、慶應義塾横浜初等部が「お子様らしさ」と「知性や社会性の共存」をどのように評価しているのかが、非常に明確に表れています。
以下は過去に実施された代表的な課題例ですが、いずれも一斉に何かをこなす形式ではなく、その場の判断力や柔軟性が試される内容となっています。
*慶應義塾横浜初等部の集団テストは、実施日、実施グループによって内容が一部異なります。そのため、こちらに掲載した試験内容もあくまで参考としてご利用ください。
2024年度の集団テスト
■運動×表現力を融合したリレー型ゲーム
チームごとに協力し、ペットボトルや輪投げ、紙風船などの用具を使ってリレー形式の課題に取り組みます。特定のルールの中でいかに役割分担をし、効率的かつ円滑に課題をこなしていけるかが評価のポイント。自分の順番を待つ間の姿勢や、仲間への声かけ、ミスへの対応力なども細かく観察されます。
■想像力を活かした制作とロールプレイ
例えばヒーローの衣装や動物のしっぽ、魔法のステッキを作成し、それらを使って物語を創作しながら演じる課題も。ここでは、手先の器用さやデザインセンス以上に、他者とストーリーを組み立てる協調性や、発表時の自信と発信力が求められます。
2023年度の集団テスト
■巧緻性と空間認識を問う積み重ね課題
ペットボトルのキャップやトランプカード、小豆、紙風船など、家庭でも身近な素材を使って「より高く」「より多く」積み重ねたり、運んだりする課題が登場しました。台紙に沿ってスティックを積み上げるなど、手順の理解や繊細な作業が必要とされる内容が中心です。
■視覚的な指示に従った課題遂行
指示に沿って紙を切ったり、線に沿って折るなど、見たものを正確に模倣する力も試されます。これにより、視覚情報処理能力と集中力、手元の正確さが評価されます。
2022年度の集団テスト
■指示理解と創造性を組み合わせた工作課題
3色のひもやストロー、紙、セロテープを使って見本と同じ形を再現したり、自分なりにアレンジして作品を完成させる課題です。模倣と創造のバランス、集中力、こだわりの強さなどが見られました。
2021年度の集団テスト
■折り紙を使った丁寧な手作業の再現課題
青と赤の折り紙を使って、先生や映像で示された折り方を正確に再現する課題が出されました。細かな手順に従う力、丁寧さ、最後まであきらめずにやり切る粘り強さが試されます。大人の指示を受けるだけでなく、自らの記憶や観察力を頼りに取り組むことが求められます。
いずれの年度にも共通しているのは、「正解が一つではない」「自分で考えて動くこと」が評価されるという点です。
状況を柔軟に読み取り、仲間と協力しながら、どうすれば課題をより良く達成できるかを自分の頭で考え、行動する――こうしたプロセスの中に、慶應義塾横浜初等部が求める“本質的な力”がにじみ出ているのです。
【慶應義塾横浜初等部】集団テストでは試験中の身の振るまいが大事
慶應義塾横浜初等部の集団テストでは、課題への取り組み方と同じくらい、あるいはそれ以上に重視されるのが、「試験中のふるまい」です。
課題中だけでなく、教室への移動、座席への着席、指示を待つ間、終了後の行動まで、あらゆるシーンでの振るまいが評価対象となります。たとえば、道具の受け渡しを丁寧にできるか、他の子のミスを責めたりせず支える姿勢があるか。こうした細かな場面の中に、お子様の「心の育ち」が見えてくるのです。
また、トラブルが起きたときにどう対応するかも重要な観察ポイントです。誰かと意見がぶつかったとき、困っている子を見かけたとき、大人の指示を待たずに自ら行動できるかどうか。その姿勢こそが、日々の家庭生活の積み重ねを物語ります。
このように、テストとはいえ「何かをうまくやる」ことが目的ではなく、「どんな人間であるか」が浮かび上がるプロセスそのものが、慶應の評価基準といえるでしょう。
【慶應義塾横浜初等部】ご家庭でできる集団テスト対策
このような本質的な力は、短期間で身に付くものではありません。慶應義塾横浜初等部の集団テストで評価されるのは、日々の中で自然と培われてきた“ふるまい”や“考える力”。そのため、対策の基本は「特別な練習」ではなく、日常の中に工夫を取り入れていくことにあります。
また、保護者は「うまくやらせる」「正解に導く」ことを目的にせず、お子様が自分の考えで挑戦し、工夫しながら取り組めたことに価値を置く姿勢が大切です。そうした関わり方が、お子様の自信を育み、本番でも“自分らしく”力を発揮する支えとなります。
ここでは、家庭で無理なく取り組める具体的な3つの方法をご紹介します。どれも日常生活に取り入れやすい内容となっていますので、ぜひ日々を過ごす際に意識して取り組んでみてくださいね。
ルールのある遊びで、社会性と判断力を育てる
家族の団らんの中で取り入れやすいのが、ルールのある遊びです。すごろく、将棋、オセロ、UNO、トランプなど、勝敗がつくゲームは、順番を守る、他人の出方を読む、自分の手をどう出すか判断するという力を自然に育ててくれます。
また、「勝っても威張らない」「負けても投げ出さない」「ルール違反をした相手にも冷静に対応する」といった感情のコントロールや相手への配慮も身につきます。
ポイントは「大人が本気を出しすぎない」こと。子どもが試行錯誤する余白をあえて残すことで、「どうしたらうまくいくか」を考える機会を生み出せます。
普段の会話に“考える種”をちりばめて
日々の会話を、ちょっとした「思考のトレーニング」に変えることもできます。たとえば、公園で鳩が集まっている場面を見たときに、「あの鳩たちは何をしてるんだと思う?」と問いかけるだけで、観察力・発想力・言語化力が刺激されます。
夕食時には「今日いちばん楽しかったことは?」「なぜそれがうれしかったの?」と深掘りする質問をしてみましょう。自分の気持ちを言葉にする力は、試験中に「どうしてそうしたのか」と聞かれたときにも大いに役立ちます。
「どう思う?」「なぜそう考えたの?」と聞く姿勢を保ち、大人の意見をすぐに挟まないのがポイントです。まずは子ども自身の考えを引き出すことを意識しましょう。
小さなチャレンジを“成功体験”に変える
集団テストでは、自分の役割を果たし、状況に応じて行動できる子が高く評価されます。こうした姿勢を育てるには、家庭の中で小さなチャレンジを日常化することが効果的です。
たとえば、朝の支度では「自分で服を選んで着てみる」ことで、自己決定と生活力が育ちます。お手伝いとしては、「テーブルを拭く」「郵便物を仕分ける」といった、簡単だけれど責任のある作業を任せてみましょう。
料理の場面では、「キャベツの葉をちぎる」「卵を割る」など、手先を使う作業や順序を考える必要のある工程を体験させるのもおすすめです。
また、公園では「遊具の順番を譲る」「おもちゃを貸す・借りる」といった場面で、自然に社会性を学ぶ機会を設けてみてください。
【慶應義塾横浜初等部】集団テストがすごい!内容や対策方法についてプロが徹底解説 まとめ
慶應義塾横浜初等部の集団テストは、ただお行儀よく、教えられたとおりにふるまえば良いというものではありません。
評価されるのは「自分で考えて動く力」「仲間との関係を築く力」「その場に適応する柔軟性」。これらは一日や一週間で習得できるものではなく、日々の生活の中で少しずつ育まれていくものです。
お子様の“らしさ”を信じて、日々の暮らしの中で丁寧に育てていく――それこそが、最も確実な対策と言えるでしょう。