2013年に開校した慶應義塾横浜初等部。名門・慶應義塾の初等教育を担う2校目の小学校として誕生し、わずか10年余りで全国屈指の人気校へと成長しました。
慶應義塾らしい「独立自尊」の精神を基盤にした教育方針、自然豊かな環境、そして高い教育水準に惹かれ、多くの家庭が受験に挑む難関校として知られています。
そんな慶應義塾横浜初等部を卒業したお子様たちは、一体どのような進路を選ぶのでしょうか? 内部進学先の中学校から、近年注目されている外部校・海外校への進学まで、プロの視点で詳しく解説いたします。
【慶應義塾横浜初等部】卒業生は外部校に進学するのか?内部進学率について
結論から言えば、慶應義塾横浜初等部の卒業生の多くは、慶應義塾湘南藤沢中等部(SFC)に内部進学します。原則として全員が進学可能な一貫教育体制が整えられており、進学率はほぼ100%に近いとされています。
SFCは中等部・高等部を経て、慶應義塾大学への内部進学が可能な完全中高一貫校です。そのため、入学時点で大学進学までを見据えた一貫教育を受けたいと考えるご家庭にとっては、非常に魅力的な選択肢となっています。
また、SFCへの進学は横浜初等部部長(一般の小学校でいう校長)による推薦を受けて決定される形式となっており、学力だけでなく日々の生活態度や人間関係などを含めた総合的な評価が重視される点も特徴です。
一方で、近年では一部の家庭が外部進学や海外進学を検討・選択するケースも報告されています。これは決して内部進学を否定するものではなく、「お子様の将来像に合わせた進路の多様化」が進んでいることの現れとも言えるでしょう。

【慶應義塾横浜初等部】進学先の実績
まずは、慶應義塾横浜初等部の進学実績について「内部進学」と「外部進学」に分けて紹介します。
慶應義塾横浜初等部の内部進学実績
慶應義塾横浜初等部卒業生のうち、ほとんどが慶應義塾湘南藤沢中等部(SFC)に進学します。内部進学に必要な試験はなく、6年間の小学校生活を経て、そのまま持ち上がりで中等部へ進学できる仕組みが整っています。
その際には、慶應義塾横浜初等部部長(一般の小学校でいう校長)による推薦が必要とされ、学業だけでなく生活面・人間性なども含めた学校生活全体を通した評価が重視されます。
その後は、湘南藤沢高等部を経て、慶應義塾大学への推薦入学が可能となるため、非常に効率的かつ安定した教育ルートです。大学附属校としての強みが存分に活かされており、「中学受験を回避し、大学まで見据えた一貫教育を求める」ご家庭には大変魅力的です。
慶應義塾横浜初等部の外部進学実績
ごく少数ではありますが、慶應義塾横浜初等部の卒業生のうち、外部進学を選択するお子様も存在します。主な進学先として挙げられるのは以下の通りです。
- 慶應義塾中等部・普通部(稀に選択されるが、受験が必要)
- 早稲田実業学校中等部、早稲田中学校など他大学附属校
- 麻布・開成・武蔵などの男子御三家中学校
- 桜蔭、女子学院・雙葉・白百合学園・豊島岡女子などの女子進学校
- 海外の中等教育機関(アメリカ・カナダ・イギリスなど)
「慶應義塾中等部・普通部」を選ぶご家庭は、主に自宅が都内にあり、中学受験に挑戦してでもいいので都心の慶應義塾系列中学校に通わせたいと願うご家庭や、ご家族の都合で引っ越しができない場合等に選択をされるようです。
「早稲田実業学校中等部、早稲田中学校など他大学附属校」を選ぶご家庭も中学校受験に挑戦することになります。慶應義塾大学以外の大学に進学したいという確固たる信念を持っていたり、6年間の小学校生活を経て「慶應義塾の価値観や文化が肌に合わないな」と感じてしまったご家族・お子様の進路となり得ます。
「麻布・開成・武蔵などの男子御三家中学校」、「桜蔭、女子学院・雙葉・白百合学園・豊島岡女子などの女子進学校」を選択する児童は、大学進学時に慶應義塾大学以上の学力や偏差値を誇る大学を選択したい。つまり、一橋大学や、東京大学など日本が誇るトップレベルの国公立大学に進学を希望しています。6年間の小学校生活を経て「勉強が得意である。もっと高いレベルで切磋琢磨したい」とその才能を開花させた場合に選択されます。
また、近年では「お子様の個性や将来の夢に合った進学先を選びたい」「世界を視野に入れたキャリア形成を目指したい」といった理由から、海外校進学という新たな選択肢を取るご家庭も増えています。
【慶應義塾横浜初等部】大学附属校なのに、外部や海外の学校を進学先にする理由とは?
人気・高偏差値の慶應義塾湘南藤沢中等部や、私学トップを言われる慶應義塾大学までを要する慶應義塾横浜初等部にせっかく入学できたにもかかわらず、内部進学の権利を放棄し外部の学校に進学する背景には、一体どのような理由があるのでしょうか。
慶應義塾横浜初等部の在校生が外部の学校に進学する理由を、プロが4点に絞って詳しく解説します。
慶應義塾大学にない学部・専攻に進みたいと考えたため
慶應義塾大学には多くの学部が設置されており、法学部・経済学部・商学部・文学部・理工学部・医学部・看護医療学部・薬学部・総合政策学部・環境情報学部など、文理問わず広い分野を網羅しています。
しかしながら、農学部、獣医学部、畜産学部、歯学部といった生命・環境科学系および医療系の一部学部は設置されていません。
このため、将来的に農業経済、動物医学、食糧問題、歯科医療、地球環境科学といった分野を専門的に学びたいお子様にとっては、内部進学ルートでは学べる環境が限定的となる可能性があります。
また、建築学については理工学部の中に建築・都市デザイン系の学びは存在しますが、いわゆる「建築学部」としての明確な学部構造は他大学に比べて限定的と見る保護者もおり、より専門性の高い進路を求めて外部校を志す例もあります。
このような場合、ご家庭では中等教育段階から進学校への進学を検討し、大学受験を経て希望の専門分野に進むというルートを選ぶ傾向が見られます。
さらに、美術・音楽・演劇などの芸術分野に進みたいお子様についても、美大や音大への進学を前提とした中等教育環境を選び、外部進学を選択する家庭も少なくありません。
海外留学を視野に入れた進学設計をしているため
慶應義塾横浜初等部の在校生家庭の中には、日常的に英語を使う職業に就いている保護者や、国際的な教育環境に価値を見出す家庭が多く存在します。そのため、お子様の将来をグローバルに捉え、早期から海外留学を前提とした教育プランを組む家庭も少なくありません。
実際に、海外のボーディングスクールや国際バカロレア(IB)認定校への進学を希望し、国内の中学校ではなく、直接海外の中等教育機関へと進む選択をする例も見られます。名家・著名人の子女にとっては、進学先として海外校が「特別な選択肢」というよりも、ごく自然な進路のひとつとして受け入れられている場合もあります。
世界標準の学びを通じて、多言語運用能力や異文化理解、国際社会での適応力を養いたいと願う家庭にとって、海外進学は大きな魅力を持つ選択肢なのです。
SFC以外の慶應義塾系列校への進学を希望しているため
慶應義塾横浜初等部の児童は、基本的に湘南藤沢中等部(SFC)への進学が内部進学ルートとして整備されています。しかし一部のご家庭では、SFC以外の慶應義塾系列校——例えば、都心に近く通学しやすい「慶應義塾中等部」や「慶應義塾普通部」への進学を希望されることもあります。
このような場合、外部受験という形で系列校を再受験することになり、内部進学の枠からは一時的に外れる形になります。通学距離や校風の相性、在籍する兄姉の影響など、多様な理由から別の慶應系列を選ぶ家庭も一定数存在しています。
スポーツや芸術など専門教育を重視したいため
慶應義塾横浜初等部に通うお子様の中には、特定のスポーツや芸術分野において高い才能や情熱を持っているケースがあります。たとえば、フィギュアスケートや水泳、バレエやピアノなど、全国・世界レベルを視野に活動するお子様にとっては、競技環境や指導体制が整った学校への進学が必要不可欠です。
そのため、慶應義塾横浜初等部での学びを終えた後、競技スポーツに強い中学校や、音楽・美術に特化した教育環境を備えた学校を選ぶご家庭も存在します。こうした選択は、本人のキャリア形成を支える重要な戦略であり、将来的な専門進学(音楽大学・芸術大学・スポーツ推薦)を見据えたものとなっています。
ご家庭によっては、国内の専門校だけでなく、海外の芸術系教育機関への留学やインターナショナルスクールを選ぶ場合もあり、柔軟な視野で最適な進路が検討されています。
【慶應義塾横浜初等部】外部進学はあり得る?卒業生の進学先は!?プロが徹底解説まとめ
慶應義塾横浜初等部は、慶應義塾大学という圧倒的な進学ルートを持つ一貫教育校でありながら、その進路は決して一律ではありません。お子様の未来は「内部進学」という一本の道だけで完結するものではなく、外部進学や海外進学といった複数の選択肢が広がっています。
大学附属校に合格・入学したからといって、それでゴールに達したわけではありません。大切なのは、お子様一人ひとりの個性や可能性を軸に、将来を見据えた柔軟な視点で進路を考えていくことです。
ご家庭としては、早い段階で「こうなるべき」と決めつけるのではなく、どのような環境がそのお子様にとってベストなのかを見極め、選択肢をできるだけ多く持たせる姿勢が大切です。
そして何より、お子様自身がどのような道を歩みたいかという気持ちを尊重し、親として温かく支えてあげること。それが、慶應義塾横浜初等部で学ぶ意義を最大限に活かす道になるのではないでしょうか。