例年、”大学附属一貫校に入学させたい”との思いを胸に小学校受験(お受験)に挑戦するご家庭はたくさんいらっしゃいます。早期に進路を確定させたい、心身ともに負担の大きくなる中学校以降の受験を回避したい、ゆとりある環境で伸び伸び成長してほしい。などその理由は様々ですが、小学校受験において名門大学を有する大学附属校は大変に人気が高いことで有名です。
今回は、人気大学附属校のひとつである学習院初等科で「中学受験をする人が多い?」と噂されている理由について、その実態を詳しく解説いたします。
学習院初等科から中学受験をする人と内部進学をする人の割合
学習院初等科とは、言わずと知れた学習院大学に附属する私立小学校です。小学校時代の6年間を四谷の一等地で学ぶ初等科は、小学校受験を志すご家庭だけでなく日本中の方々が一度はその名を耳にしたことがあるであろう超有名小学校ではないでしょうか。
小学校受験における御三家(慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部)のひとつにも数えられ、受験倍率は例年10倍を超えます。合格難易度も大変高く、例年数多くのご家庭が合格を目指して必死に受験準備に取り組まれる、まさに難関中の難関校と呼んでも過言ではありません。
学習院初等科は、幼稚園から大学院までを有するエスカレーター校で、幼小からの内部進学率が高いことでも有名です。
「学習院初等科から中学受験をする人が多い?」という噂話とは裏腹に、学習院では幼稚園在園生のほぼ100%が学習院初等科へ進学し、初等科在校生のうち男児は学習院中等科・高等科へ、女児は学習院女児中等科・高等科へほぼ全員が内部進学します。

学習院初等科から中学受験をする際の進学先
ほぼ100%が内部進学すると言われている学習院初等科ですが、ごく一部の児童は中学受験を経て外部進学をします。その主な進学先は一体どのような学校群なのでしょうか。詳しく解説していきます。
学習院初等科から中学受験をする際の進学先は、大きく分けて3つです。
ひとつ目は「御三家、女子御三家と言われる名門校やそれに準ずる高偏差値校」、2つ目は「スポーツや音楽、美術など専門分野に特化した中学校」、3つ目は「海外留学/海外大学への進学実績が高い進学校」です。
- 御三家、女子御三家と言われる名門校やそれに準ずる高偏差値校
- スポーツや音楽、美術など専門分野に特化した中学校
- 海外留学/海外大学への進学実績が高い進学校
どうしてこのような学校群が、学習院初等科から中学受験をする際の進学先として選ばれるのでしょうか。
学習院初等科から中学受験をする人の理由
出身者のうちほぼ100%が内部進学をすることで有名な学習院初等科において、中学受験を経て外部進学するお子様やそのご家庭には一体どんな理由があるのでしょうか。その驚くべき理由を詳しく解説します。
偏差値的により高いレベルへ挑戦したい
学習院初等科は歴史と伝統ある日本随一の名門小学校です。教職員による指導力の高さに定評があり、日本トップクラスと言える高水準の教育を受けることができます。
小学校受験を経て学習院初等科に合格するお子様というのは、そもそも地頭がよく能力が高い傾向にありますが、そこに学習院初等科の教育力が合わさることで学力が飛躍的に向上するお子様もたくさんいらっしゃいます。その結果、より一層高いレベルで学びたいと考えるご家庭・お子様が外部受験に舵を切ります。中学校受験御三家と呼ばれる開成中学校や麻布中学校、女子御三家のトップである桜蔭中学校の在校生の中には、学習院初等科出身の生徒をちらほら見つけることができるそうです。
小学校受験のリベンジをしたい
私立小学校御三家のひとつと数えられる学習院初等科とはいえ、すべてのご家庭が第一志望校として受験をする訳ではありません。本命の小学校とご縁を結ぶことができず、悔しい想いを抱えて入学されているご家庭がほんの少数ではありますがいらっしゃいます。
そういったご家庭が、中学校受験を通して志望校に再チャレンジすることがあります。挑戦できるのはあくまで中学受験を実施している学校群に限られますが、毎年一定数の児童がリベンジを目指して外部受験に挑むそうです。
学習院初等科の進学先となる学習院中等科・学習院女子中等科も大変人気があり偏差値も高い学校ではあります。そんな貴重な学校への内部進学の権利を手放してでも、小学校受験の第一志望校にもう一度挑戦したい!と願うご家庭も少数ではあれどいらっしゃるのです。
医療系大学への進学を目指している
私立小学校在校生の保護者に医師が多いことは周知の事実ですが、学習院初等科も例にもれず医師家庭の子女が多く在籍しています。中には何代も続く医師家系もあり、生まれた時から家業である病院や医療法人を継ぐ運命を背負っているお子様もいらっしゃいます。その場合、医師になるため医学部(歯学部)へ進学することが必須となり、必然的に中学受験を経て医学部受験に強い中学校へ進学される選択をされます。
「医学部進学がマストであれば、最初から中受校(在校生全員が中学校受験に挑戦することを前提とした私立小学校)や公立小学校を選べばよいのでは。」と思われるかもしれません。しかしこういった家系の方々は、人格形成の基礎となる初等教育の環境を最も重要視します。
学力は後からいくらでも鍛えることができますが、価値観や精神面での成長を促せるのは、やはり集団生活の中心となる小学校であると考えるのです。親御様自身が学習院初等科のご出身であり、自分の子ども時代と同じ環境で育ってほしい。似た感覚や価値観を持つご家庭やそのお子様と生涯の友となるような関係性を築いてほしいなど。小学校時代は、育ちや価値観形成といった点に重きを置いて子育てをしようという方針の元このような選択をされるのです。
スポーツや音楽、美術など極めたい専門分野がある
学習院初等科に進学し小学校時代を過ごすうちに、スポーツや音楽、美術といった才能が開花し、その分野を極めたいと願うお子様とご家庭は中学受験を経て外部進学を選択します。音大の附属校や美術に特化した学校、各スポーツの強豪校と言われる学校などがその選択肢となります。
学習院大学が所有する学部は法学部、経済学部、文学部、理学部、 国際社会科学部の5つであり、スポーツや芸術に特化した学部がありません。専門分野を極めたいと願うお子様が学習院大学に進学してしまうと、専門分野を学ぶことができなくなってしまいます。
大学進学時にスポーツや芸術に特化した大学の受験に挑戦するという方法もありますが、1日でも早く専門性を高めたいと願う場合や、大学受験をより有利に進めたいと考えた場合、早期に進路選択をすることがその道を究めることにつながると判断した場合に中学校受験を経て専門分野に特化した中学校へ進むのです。
中学校から海外で学ぶことを望んでいる
中学校以降は海外で学ぶことを希望するお子様・ご家庭も内部進学をすることなく中学受験に挑戦します。
その場合、「海外大受験に強い中学校を受験する方法」と「最初から海外の中学校を受験し留学する方法」の2つの選択肢から選ぶことになります。
前者の場合、海外大学への現役合格率の高い中高一貫校を選ぶ傾向が強く、都内ですと広尾学園や渋谷教育学園が代表格です。
後者の場合ですと、大学・高校留学に比べて中学校からの留学は入学条件が低く設定されている傾向があり、高い英語力を求められないことからハードルがぐっと下がります。
どちらを選ぶにせよ、「中学校以降は海外で学ぶこと」をマストとする場合、中学校受験(国内/海外)に挑戦することになるのです。
学習院初等科から中学受験をする人が多い?実態を解説まとめ
ここまで読み進められた方であれば、学習院初等科から中学受験をする人が多い?意外な実態をご理解いただけたことと思います。
学習院初等科に在校児童は、ほぼ100%が内部進学します。しかし、ごくわずかではありますが一部の児童は内部進学の権利を捨ててでも過酷な争いとなる中学受験へ挑戦する道を選びます。
学習院初等科から内部進学をすることができる学習院中等科・学習院女子中等科でも十分な教育を受けることは可能です。しかし、あえて厳しい道を選び、自分自身の限界に挑戦し、さらなる高みを目指すことで成長し続けたいと願う、高いモチベーションと自己研鑽の気持ちをもった一部の児童が中学受験に挑戦するのです。
そして、そのような挑戦する気持ちの芽を見出し大きく育んだのは、まぎれもなく学習院初等科の教育目標である「真実を見分け、自分の考えを持つ子ども」あってのことです。
たとえ学習院の輪から飛び出したとしても、その想いを思いやり尊重し背中を押すことは、児童の生きる力を育てたいと願うことは学習院初等科の教育そのものです。
学習院初等科から中学受験をする人は決して多くはありませんが、周りと異なる決断をしたとしても、それが児童一人ひとりの夢を実現する助けとなるのであれば笑顔で送り出す。これこそが、学習院初等科の教育実践であり、愛と思いやりの形と言えるでしょう。