幼稚園選びに関するご相談の中で、「私立幼稚園と国立幼稚園のどちらがいいのでしょうか?」というご質問を受けることがあります。
よくお話を聞いてみると、このようなお悩みを抱えていらっしゃる方の中には、「国立幼稚園についてよくわからない」という方が多くいらっしゃるようです。
確かに、国立幼稚園は私立幼稚園に比べて閉鎖的なところが多いので、保護者が幼稚園の実態を把握するのは困難だと思います。
そこで本記事では、国立幼稚園と私立幼稚園の違いについて具体的に解説していきます。国立幼稚園と私立幼稚園の違いをしっかりと把握していただき、幼稚園選びに役立てていただけたらと思います。
国立幼稚園と私立幼稚園の概要の違い
国立幼稚園は、国立大学に附属する幼稚園です。「令和6年度 学校基本調査」によると全国に49園しかなく、国立幼稚園が設置されていない県もあります。現在は国立の附属学校や附属幼稚園を縮小する動きがあり、国立幼稚園への入園は狭き門になっていると言えます。
一方で、私立幼稚園は、学校法人や宗教法人など、国や自治体以外の法人が設立・運営する幼稚園です。私立幼稚園は全国に5,949園と公立幼稚園よりも多く、すべての都道府県に設置されています。都道府県別に見ると、東京都が799園と1番多く、次いで神奈川県の566園、埼玉県の444園、福岡県の376園、千葉県の375園、愛知県の331園、大阪府の324園と続きます。
そのため、お住まいの地域によっては、国立幼稚園や公立幼稚園は選択肢に上がらない方もいらっしゃいます。このことを踏まえた上で、国立幼稚園と私立幼稚園の違いについて見ていきましょう。
教育方針の違い
国立幼稚園は、文部科学省の方針に則った教育方針で教育を行います。また、大学の教育研究機関としての役割がありますので、大学の研究理論に基づいた実験的・先進的な教育が行われています。私立幼稚園に比べて保護者と協働しながら教育していこうという方針の園が多いのも特徴です。総じて、試行錯誤しながら子育てをするイメージが強いかもしれません。
一方で、私立幼稚園は、設置母体や設置者の思想が色濃く反映された教育方針をとります。例えば、キリスト教の宗教法人が設置母体なら、キリスト教の精神や価値観に基づいた教育が行われます。教育方針がはっきりとしている分、ご家庭の教育方針と一致していれば心強いですが、入園後に乖離があることを感じて苦労するご家庭もあります。
いずれにしても、入園前に園の教育方針がご家庭の教育方針と同じ方向を向いているかをよく確認しておく必要があります。
カリキュラムの違い
国立幼稚園は、公立幼稚園と同じく『幼稚園教育要領』に基づいたカリキュラムで教育を行います。『幼稚園教育要領』とは、学校教育法に基づいて文部科学省が告示する幼稚園における教育課程の基準で、幼児期に育てたい力が明確に示されています。ただし、実際には大学や幼稚園での研究に合わせて弾力的にカリキュラムを運用することが多くなっています。また、国立幼稚園は教員養成の役割も担っているため、幼稚園教諭を目指す学生が教育実習を行う場にもなっています。国立幼稚園の先生は研究熱心な先生が多い傾向で、大学の研究を踏まえて、教育理論に基づいた実践的な教育を行っています。
一方で、私立幼稚園も『幼稚園教育要領』に基づいた教育を行うことになっているものの、建学の精神や独自の教育理念にも基づいて教育を行っているのが特徴です。そのため、宗教教育、モンテッソーリ教育、国際理解教育など、独自性のあるカリキュラムを取り入れています。私立幼稚園の先生は幼稚園が独自に採用している先生なので、基本的に異動がありません。長年その幼稚園の教育に携わる先生もいて、教育理念を体現できるように研究を深めています。私立幼稚園はそれぞれに特色のある教育をしているため、ご家庭の要望に合った園を選ぶことが大切です。
卒園後の進路を比較
国立幼稚園は、国立大学に附属している幼稚園で、必ず附属小学校も設置されています。そのため、多くの国立幼稚園の園児は、附属の国立小学校に内部進学することになります。ただし、附属小学校への内部進学制度を利用できるかどうかは園によって異なるので注意が必要です。例えば、東京学芸大学附属幼稚園では、竹早園舎から東京学芸大学附属竹早小学校への内部進学制度があります。竹早小学校は男女それぞれ20名の募集枠に男女それぞれ1,000名以上の志願者がいる人気校ですので、内部進学を利用できるのは大きなアドバンテージになります。一方で、小金井園舎は東京学芸大学附属小金井小学校への内部進学制度がないので、多くのご家庭は小学校受験をすることになります。
私立幼稚園の卒園後の進路は、園によって様々です。例えば、青山学院幼稚園は、青山学院大学まで内部進学制度を利用することができますので、小学校へも内部進学をする園児がほとんどです。また、雙葉小学校附属幼稚園は、中学受験の「女子御三家」のひとつに数えられる雙葉中学校・高等学校に内部進学できることから、女児は基本的に附属小学校に進学します。このように、一貫教育をしていて、有望な進学先がある園であれば、附属小学校へ内部進学する園児が多くなっています。一方で、例えば御三家幼稚園と称される「若葉会幼稚園」「枝光会附属幼稚園」「愛育幼稚園」は附属の小学校がないため、小学校受験をするご家庭がほとんどです。特に御三家幼稚園は小学校受験の高い実績を誇っており、慶應幼稚舎や早稲田などの難関小学校を目指すご家庭の登竜門的な幼稚園になっています。
費用感の比較
国立幼稚園の保育料は公立幼稚園並みに安くなっていて、年間で15万円〜20万円程度です。公立幼稚園に比べると保育料無償化の恩恵が少なく、園外学習費などの実費負担が多いことがあるので公立幼稚園よりは高いですが、私立幼稚園ほど高くはありません。3年間通わせる場合の費用は、概ね50万円を想定しておくとよいでしょう。
一方の私立幼稚園は、入園料、授業料、教材費、制服代、給食費、行事費など様々な費用が国立幼稚園より高いことが多く、園によっては寄付金が必要な場合もあります。保育料は園によって異なりますが、年間で50万円〜100万円かかります。3年間私立幼稚園に通った場合の費用は、200万円〜300万円を見積もっておきましょう。
メリットとデメリットを比較
国立幼稚園のメリットは、系列の国立小学校への内部進学ができることが多いことです。どの地域においても国立大学附属小学校は人気があり、受験倍率が高い傾向にあります。そん附属小学校に内部進学できるのは、小学校受験を回避したいご家庭にとって大きなメリットになります。また、費用負担が少なく、充実した教育が受けられるのもメリットです。公立幼稚園並みに安い保育料で、先進的な研究を受けられるのは魅力的です。そのため、経済的な理由で私立に通わせるのが難しいご家庭にとって、国立幼稚園は有力な選択肢になります。一方で、国立幼稚園の入試倍率は高いことが多く、複数の国立幼稚園を併願するというのは現実的ではないため、そう簡単には入園することができません。また、抽選が行われる幼稚園もあるため、実力だけではなく運も必要なことがあります。さらに、保育時間が短いことがあるため、共働きのご家庭にとっては不向きなこともデメリットです。
私立幼稚園のメリットは、系列の私立小学校へ内部進学できることです。私立幼稚園の卒園後の進路でもお伝えした通り、難関小学校や難関中学校と呼ばれる学校へ内部進学できる幼稚園があります。中学校受験は加熱の一途を辿っていますし、それに伴って小学校受験も激化していますので、名門校への進路を幼稚園の段階で確保できるのは大きなメリットです。また、園ごとに特色のある教育が受けられるのもメリットです。自然体験が充実している幼稚園、宗教の価値観に基づいた教育を行っている幼稚園、音楽や芸術に力を入れたカリキュラムを取り入れた幼稚園など、それぞれの園には特色があります。幼稚園受験を通して、魅力あふれる幼稚園を主体的に選ぶことができます。一方で、国立・公立幼稚園に比べて費用負担が大きいのがデメリットです。私立幼稚園に通いつつ、習い事や幼児教室への費用も負担するとなると、かなりの出費になります。私立幼稚園に通う費用だけでなく、トータルの経済的負担を考慮しなければいけません。また、幼稚園による教育の差が大きいことにも注意が必要です。万が一ご家庭と幼稚園の教育方針が合わないと、お子様にとっても親御様にとっても大きな負担になります。特に、私立幼稚園は、ご家庭が幼稚園の方針に合わせなければいけないことが多いため、説明会や見学会に積極的に足を運び、納得できる幼稚園を選ぶようにしてください。
国立幼稚園と私立幼稚園には、「教育方針」「カリキュラム」「卒園後の進路」「費用感」において大きな違いがあることがわかりました。また、それぞれの幼稚園にメリットとデメリットがありますので、ご家庭の方針やお子様の特性に応じて幼稚園を選んでいただくことが大切になります。
今回は、国立幼稚園と私立幼稚園の違いについて比較しながら解説しました。お子様の特性や親御様の方針によって適した幼稚園は異なりますので、一概にどちらがよいとは申し上げられません。ただ、国立幼稚連と私立幼稚園で迷ったら、少なくとも今回ご紹介した違いを意識して比較するとよいと思います。また、私は願書作成や面接レッスンだけではなく、「幼稚園受験個別相談」もご提供しております。もし国立幼稚園と私立幼稚園のどちらがいいか迷ったら、お子様や親御様に合った幼稚園選びのお手伝いをさせていただきますので。ぜひ私にご相談くださいね。今回ご紹介しきれなかったポイントも踏まえて、お子様にぴったりの幼稚園を一緒に選びましょう。もちろん、幼稚園選びに関するご相談だけでなく。受験に関するご相談も承っておりますので、お気軽にご連絡いただけたらと思います。
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